つがい

遠藤健人

フロッピーディスクの中にいた動物たちが放たれたのはこの春のこ
とだった。逆さにして振るだけで一匹ずつぬるぬると飛び出してい
った。飴色の鳴き声がとてもうるさい。私の影で爪とぎを始める者
がいたので私は「やめてくれ」と思わず叫んだ。「せめて楽しそう
にやってくれないか」動物は泣いていた。一匹残らず泣いていたの
で私は角が短い者から順に慰めてやった。「よしよし」「よくない
よ」一番長い角を持つ者がそう言って私の掌を角で突き刺した。血
が流れた。私の血液は飴色だった。一番短い角を持つ者がそれを舐
め取った。私は身の内で強烈な性欲が湧き上がるのを感じた。実に
半世紀ぶりのことだった。「私の精液は何色だったかな」「何色で
も構わない。それより、さっきは悪かったよ。もう一度『よしよし』
と言ってくれないか」「よしよし」「そんな言い方ではなかったは
ずだ」「よしよし」「違う」「よしよし」「もう一度」一番長い角
を持つ者は一番短い角を持つ者とつがいになる。二番目に長い角を
持つ者は二番目に短い角を持つ者とつがいになる。三番目に長い角
を持つ者は三番目に短い角を持つ者とつがいになる。四番目に長い

つがい

つがい

詩誌『月刊ココア共和国 2020年7月号』(電子版)に佳作として掲載された詩作品です。

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2020-06-27

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