⬛︎朗読詩「腸(はら)」

にょすけ

毒を、食らったのかも知れない。
(はら)の奥、渦巻く何かをそっと
へその奥の奥のほうへ
押し込めた。

その渦巻く何かは時折
轟々と音を立てながら私の
腹の中から出ようとし
上っ面の涙を流しては
喉を熱く。焼く、焼く。

地獄の業火とはこの事かと
焼けただれてゆく喉元と
昼に食べたトマトを踏み潰し
迫り出された種がヒールにかかろうとも
私は喉を焼く、焼きつくす。

毒を食らったのかも知れない。
(はら)の中から私はおそらく叫んでいたのだ。

きっと昇る(あさひ)
鼻腔(びくう)にたどり着く朝食のベーコンエッグの
香ばしく焼けた油のかおりを
毎朝最後のひとつなのだと
まるで宝石みたいに大事に仕舞い込んだ私は
私は、おそらく叫んでいたのだ。

歩みを進めた先に人生など無く、
歩みを止め、振り返った跡に
人生と名前をつけてみただけなのです。

奇しくも私には、それと呼べるものは、無いのだけれど。

毒を食らったのかも知れない。
(はら)の中から私はおそらく叫んでいた。そうに違いなかった。

(はら)の奥、渦巻く何かをそっと
私は私自身を愛することのできぬまま
あなたとの幾重にも重なる愛だけを、
愛だけを信じて。

何度だって、あなたを飲み干しました。
何度だって、あなたを飲み干しましょう。
きっと私は毒を喰らったのです。
あなたという毒を喰らったのです、そうでなければ
そうでなければ、この焼けるような
胸の、胸の痛みは
一体なんだと、一体なんだというのでしょう。

しかしそれももうおしまいです。
この喉元にも胃の先端にも
何もかもに蓋をつけて
私をへその奥の奥のほうへ押し込めて
地獄の業火で焼くのです。

しかし、それももうおしまいです。
この喉元にも胃の先端にも
何もかもが毒された私は、


地獄の業火で焼くのです。


それではみなさま、よい1日を。

⬛︎朗読詩「腸(はら)」

⬛︎朗読詩「腸(はら)」

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2020-06-25

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