竜憂

ふいに憧憬が拡散する
夕闇の匂いが
鋭利に突き刺さった

線上の景色には似つかない
あかく透明な天蓋になっている

あなたに穿たれた楔とは
物言えぬ誓約だ
偽物の言葉には色がないから

仄かに放たれる
意味の欠片には
どこか清澄な調べがあるのだろう

なにも問わずに口づけは交わせない
存在の希薄な正しさは
冷ややかな天秤のしもべである

月明りを憂う竜たちも滅ぼされて
夜空は歌う、螺旋状の憂愁を

竜憂

竜憂

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-06-21

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