シャワーチェア入浴時のこと

 私は週2回訪問入浴介護をうけている。一つは3人の介護業者にベッドサイドに準備したポータブル風呂に入れてもらう方法、もう一つはシャワーチェアに座ったまま体を洗う方法だ。前者の方法でトラブルは何もなかった。後者についてはずっと妻にしてもらっていたが、妻の用事が増えたので訪問看護施設に依頼することにした。それから1ヶ月たった頃に問題が起きた。
 シャンプーを使った直後だったから体やタイル床などはまだ石鹼液が付いていた。でも、あとは背中と臀部を洗えば終わりだと思って安心したせいか、この時点で誰も石鹼液にさほど注意を払わなかった。これがまずかったと思う。私はいつものように目の前の壁に付いている横棒を両手で掴み、両足で立ち上がろうと踏ん張ったが足がつるっと滑ってできなかった。危ないと思ったのですぐ後ろに置いたチェアに座ろうとしたが、案の定、座面が滑ってできなかった。無理すれば失敗して、お尻がタイル床にドスンと落ちて腰椎圧迫骨折をするか,頭をタイル床にガツンと打って頭蓋骨々折をするかである。私はなすすべがなく、すぐに足と手が疲れて来て、洗い場にたおれそうになった。幸い、看護師が必死に私の体を支えてくれたお陰で怪我することなくタイル床に横たわることができた。外出中の妻にすぐ連絡をとり、応援してもらって私はどうにかベッドに戻った。
 反省。私は浴室で立ち上がる時に石鹼液で濡れた手、足、チェアに気づいていたのだからシャワーのお湯でよく洗いながすべきだったのに、それを怠ったのが問題だった。そのような分かり切ったことでさえ、細心の注意を払わないと隙ができて今回のようなことになる。油断は禁物である。
2020/6/17

シャワーチェア入浴時のこと

シャワーチェア入浴時のこと

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-06-19

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted