永遠におわらない夏の見つけ方

 たかいところからみた、夏。あれって、たぶん、永久性は失われていて、ぼくたちが、ちゃんと、おわりを見届けるようにできている、つまりは、はじまりがあれば、いずれ、おわりがくるという現実を、目を背けずに向き合いなさい、という神さまの教え、のようなもの。儚さと、美しさが、等しく、破滅と、愛が、紙一重で、はじまりと、おわりが、一対の、きみと、ぼくが、表裏一体として、もう、星がはやく、おかあさんのからだにかえればいいのに、という他人事みたいな憂いが、真夏の太陽に焼かれる日に、街のビル群は砂の城となる。
 ひとびとは、すこしずつ、ひとのかたちを、なくして。
 心だけが、ひととして、まだなんとか、ひととしてのものを、あたらしい肉体のなかに残している。
 打ち上げ花火が、夜を明るく染めるとき、きみの左手に宿った熱が、冷え切った星の一部に、息を吹きこんで、星が、ふるえる。よろこんでいるのだと、誰かが言って、むせび泣いているのだと、ちがう誰かが答える。ぼくは、読みかけの本を閉じて、ついでに瞼も閉じる。ゆるりと、星の鼓動と、重なり合ってゆく。心音。血の流れ。肉の躍動。胎児となり、星が、母なる海に抱かれて、眠る頃には、夏が永遠となり、きみが運命となり、やさしさがすべての生命体のデフォルトとなって、ぼくたちは、ひと、というかたちをなくしても、ひと、としての尊厳を保ったまま、添い遂げる。
 本のカバーの、ざらりとした感触が、いつまでも指の腹にあって、きえない。

永遠におわらない夏の見つけ方

永遠におわらない夏の見つけ方

  • 小説
  • 掌編
  • 青年向け
更新日
登録日
2020-06-11

CC BY-NC-ND
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