紫陽花

雨に濡れる紫の紫陽花
滴る雫が涙みたい

窓辺のキミが小さく呟いた
その声をまだ覚えている

雨の音にかき消されてしまいそうなほど
小さかったのに

ボクの耳に響いて
今でも離れない

それは確かに
キミが此処にいた証

ボクだけが知っている
キミの輪郭

薄暗い部屋で窓辺だけ僅かに明るい
白くぼやけた昼下がりの風景

今頃になってそれが気がかりになったのは
きっと今此処にキミがいないから

キミはどこへいってしまったの?
あの日からボクはずっと
ずっと止まない雨の中
一人で空が晴れるのを待っている

紫の紫陽花は今年もまた咲いて
雨に濡れている

滴る雫がキミの涙みたいだよ

紫陽花

紫陽花

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-06-11

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