解凍

僕が記憶を凍らせたのではなくて
記憶が僕を凍らせたのだろう

あなたはいま、どこにいますか?
あなたは昔、どこにいましたか?
憶えて、いますか?氷が融けはじめた瞬間を

至るところに咲いていた、日々、罠、感情
摂氏何度で安寧が得られたのか、悔は胎動していた
流転する柩を満たす羊水には、確かに情動が溶けていた
朝が告げるものは、夜が零すものよりも冷たいことがあり、今の今まで断片を継ぎ接ぎにして生きてきたことを眼前に叩きつけてくる

霞んで見えるもの、に僕もなるんだろう、きょうの日も
じぶんで暈していながら手探りになるほど滑稽なことはないと嗤っていた、いつかの遠い昔の僕へ
愛と憎悪を影で操っているのは執着です
氷漬けの心が空気に溶けないように
不確かな温度に惑わされないように

解凍

解凍

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-06-09

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