紫煙のひと

禁煙しているから口寂しい。ずっと水を飲んでいないときのようにからからで渇いている。飴を舐めても甘いばかりで渇きを潤してはくれない。あの錆びた銅みたいな、白くくゆる煙をこの肺いっぱいに吸い込んで、肺胞を黒く塗りつぶしたい。だから貴方とのキス、好きよ。まるで高級なフィルターみたいで。

紫煙のひと

紫煙のひと

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-06-09

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