波の音
潮の匂い
瀬戸の海風

釣りびとがいる
エサをつけては海へほうり
何か釣ってはまたエサをつけ
きっと彼にとっては結果などどうでもよいのだろう
私は港町に生まれたからか昔から釣り好きを見てきた
私自身は関心など少しも抱いたことはなかったが

そんなことを考えながら
この文を綴る今に至る

急に波が荒くなった
防波の岩を呑み込むように波が押し寄せてくる
海が鳴いている
孤独な少年の声で
大地を呑もうとしている
厳めしい表情をして

目を閉じる
深く一度だけ空気を吸う
聴覚に意識をやる

どのくらい時間が過ぎただろう
気付いた頃には風が止んでいた
先ほどまで悠々と空を飛んでいた鳥も見当たらなくなった
静かな海
逃げるように沈んだ太陽
私はただ悲しげな海を眺めていた

海べりへ出てみました。いつも見ている海なのに近くで見ると表情が窺える。当たり前のことですが、素晴らしい体験をさせて頂けたと思います。

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-11-09

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted