海
波の音
潮の匂い
瀬戸の海風
釣りびとがいる
エサをつけては海へほうり
何か釣ってはまたエサをつけ
きっと彼にとっては結果などどうでもよいのだろう
私は港町に生まれたからか昔から釣り好きを見てきた
私自身は関心など少しも抱いたことはなかったが
そんなことを考えながら
この文を綴る今に至る
急に波が荒くなった
防波の岩を呑み込むように波が押し寄せてくる
海が鳴いている
孤独な少年の声で
大地を呑もうとしている
厳めしい表情をして
目を閉じる
深く一度だけ空気を吸う
聴覚に意識をやる
どのくらい時間が過ぎただろう
気付いた頃には風が止んでいた
先ほどまで悠々と空を飛んでいた鳥も見当たらなくなった
静かな海
逃げるように沈んだ太陽
私はただ悲しげな海を眺めていた
海