灰色の雲を遮るように頭上で電線が右往左往する路(みち)を早足で歩いて家へ帰る。何も追ってこないし、何にも出会わないのに僕は、恐れて、ただ路を間違えない様にだけアスファルトに写る電線の影を避けていた。この一本道はずっと向こうまで続いていて、電柱から電柱へ黒い糸が織り成しているのだ。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-06-09

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