地底の家

長らく雨が降っていた。空から落ちる透明な雫はたくさん大地に染み込んだ。くすんだ色だった。ここは肌寒い。世界の音は、鼓膜の遠い所で再生されているようだった。渓谷の間をコンドルが翔いてゆく。音もなく上昇し、小さくなった。僕も翼が欲しかった。土は柔らかくなっていた。僕に故郷は無かった。

地底の家

地底の家

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-06-08

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