空想観覧車

1

ご都合主義は体に毒です、と言われたので意を決してご都合主義科を受診した。待合室には俺と同じような人がいて、幾分安心した。医者は若そうだがしっかりとした人だった。十日分薬を処方される。これからはご都合主義を控えようと思った。「いや本当に主人の勝手気侭な性分が嘘みたいに治っちゃてね」

2

「あなたは依存性の高い人ですね」
カクテルグラスに注がれる下品なピンクを見つめた。知ったような口を聞く奴が憎かったがそれを悟られてはならないと思い、深いブルーのアイシャドウを重ねていた。此処の酒は大して美味くない。飲み過ぎを揶揄うバーテンは、いつも静かに見透かしていた。

3

薄情な紅をお許し下さい
私は貴方に口付ける
貴方は口内の温度だけを信じる
冷めた瞳は知らんふり

薄情な紅をお許しください
私は貴女に口付ける
貴女は唇の震えを隠さない
熱い吐息は涙で湿った

空想観覧車

空想観覧車

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-06-08

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