危険なつばさ第5章

僕は、知っていると、思っていたんだ。神経を、尖らせて、瞬間を、かわせば、生きて行ける。  
その上に、又その上に、雲も風も、僕いを疲れさせる。
心がひるむ、つばさを開け、頭を上げろ、負けるもんか。僕にあるのは、胸に、抱いている傷だけ、、、、

僕は、ふんずけられたときも 頭や、からだをつつかれている時も。もう、腹もたたない。
これが、なれるって言う事なんだね。
兄弟達も 母さんが、獲物を運んできた時は、
僕の尾羽根が、光ろうと光るまいと、平気で僕の上に飛び乗ってくるようになった。
「お前は誰よりも、速くとばなければならないよ。」
お母さんの声が聞こえる。
「速く飛ぶのは つかれるんだよ。母さん。」
僕は、本当にスズメだろうか。僕は、思ったとうりの方向へピタリと梶をきる。
頭から尾の先まで、広げた羽根まで三角形になって風を切る。
この尾羽根のおかげで、僕は、すばやく飛び立てる。蛇行飛行も急カアブも、自由自在だ。
僕は、光る羽根の危険といしょに、自由自在に滑らかに飛ぶ力をもらった。
光る羽根は、危険だということをしっている。敵に見つけられる。それにもうひとつ、
高く売れるんだって 人間に会うまで 知らなかった。
スズメの仲間は、ぼくと、いしょに、飛ばないようにする
ああ;そういえば、兄弟達も そうだった。
僕は、気づいていなかった。「とにかく 光ちやいけないんだ」。お母さんは、他の子供を心配していた。初めて自分がどうやっていきてきたかをしった。
スズメは、皆 おなじように、いきてると思っていた。僕は 親とも兄弟とも違う生活をしてきたんだ。
巣の中で注意を怠ることなく 空にも、風にも お母さんの。動きにも気をつけて。
スズメはもっと、のんびり、楽しく、すごしたのか。僕の気づいた事に、何にも気づかずに。 
それが、誰もが生きてきた毎日だったのか。そんなに、簡単に生きる事を、僕は、どうしてしらなかったんだろう。
世界中の、空も、山も、僕一人を残して いなくなった気がした。「悲しかった。」

         三 
僕は、スズメみたいに ゆっくり飛んで、海へ出た。
港には、船がいくつかとまていた。僕は、大きい船の一番高いところへとまった。
そして、大きく、深呼吸したんだ。こんなところへ、とまちゃいけないよ。危ない。いつものくせだ。潮風と、太陽の光は、ここちよかった。誰もいない広い船の甲板の後ろのほうに、ボートが1艘、底を上に向けてひっくり返ったかこうでのていた。
ロープでキチンと、固定してある。 甲板の下から足音がする。「何だ。」人が、甲板に上ってくる。甲板の下に、船員達の部屋があったのだ。
太った、白い大きなエプロンを掛けた男と、背の高い赤いシャツの イキな格好をした男が、僕の泊まっている足の下のドアを、ガチャン、と開けて出てきた。僕はとっさに裏返して 天を向いているボートの上にとびのいた。
「スズメがいるぜ。」背の高い男が言った。
「海に スズメなんかいるものか。」エプロンをはずしながら太った男がいった。
男達は僕を見た。そして顔を見合わせた。
危険だ。ズ ズ ズ全身に信号が走った。
床の上に何か、パラパラまいた。いつかの記憶が、よみがえってくる。
飛び立つんだ。
僕は、用心深く飛び立つ準備をしてまった。
その時、尾羽根が開いた。明るい太陽に光った。
「珍しいな光ったぜ。」赤シャツのトムが、、首を伸ばして覗き込んだ。僕は首を伸ばして、チュンとないて、警戒の声を出した。「スズメの鳴き方だ。」
「新種か。」太った男も、まじまじと僕を見た。
二人は顔を見合わせた。
僕は、もう、解っている パッと、飛び立った。
船は、港を出たんだ。僕は、気がつかなかった。
海は、広い遠くに山が見える。町が、どんどん、遠ざかる。 
僕は、そんなに長く飛べない。考えている暇もない。船も遠くなっていく。僕は全速力で船にもどった。
二人の船員は、まだ僕を見ていた。船の甲板にパラ、パラ、とまかれた物。いつかの記憶がよみがえってくる。解っている。でも、僕は、おなかがすいていたんだ。
「海の上だぜ、飛んでいかれちゃあ、どうしようもないぜ。」
二人の男は、目配せをしてドアの向うに消えた。 
僕は 香ばしい匂いのする。フワフワしたものをチュンチュンと、鳴きながら食べた。
僕は、行くところがない。
海、どこまで行っても波ばかり。
船は、波をかき分け、白いあわを逆巻いて、船の通った道に、波の線ができる。
白い鳥が飛んでいる。あれは、カモメだ。カモメは自分で魚を取るんだ。感心するよ。
僕は、スズメだ。できない。
僕は、裏返しのボートの下へもぐりこんだ。中へ入って下から見上げると、ボートの先の方が、ちようど棚のようになっていた。僕の住家にした。
 太陽が、高く登った。甲板に足音がする。
パラパラと、白いものがまかれる。そして、足音を忍ばせて そううっと帰っていった。
僕は、ボートの下から用心深く出て行った。そうするしかなかたんだ。船のデッキの隅に、ちいさいカンカンが、ぶら下がって、ゆれている。
その上にとまってみた。中には水がゆらゆら動いていた。僕は、それを「チュン」と飲んだ。
僕は、船にゆられて、泡立つ波とエンジン音の中で、何日もすごした。
足音もゆったりとして、パラパラとパンをまいたあと、男達は甲板に座って、僕の泣き声を聞くようになった。なれたんだね。 
トムは、細長いパンを持って、
「チ、チ、。」と言いながら僕を手招いた。
僕は、うかりしていたんだ。トムの手に、飛び乗って、チクと、パンを食べた。トムの手が、後ろへ回った。自然に、スゥゥと、普通の鳥なら 気が付かない。僕は知っている。
そこに 用意されている、虫取り網を見逃すはずはない。ズズン全身にサインが走る。
パット、飛びのいて海に出た。飛んだ。
「もう、二度と帰るまい。」

危険なつばさ第5章

危険なつばさ第5章

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-11-09

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