「彼」と「彼女」は、淡路町の片隅にある古くて安い木造アパートで暮らしていた。 野良猫の撮影をする、フリーの写真家である「彼」と、東京駅の書店で派遣として働く「彼女」。二人の出会いは五年前に遡る。東京のど真ん中で質素で何気ない日々を送りながら、年を重ねて、三十手前。周りは当たり前のように結婚していく中で、不思議な同棲を続けていた。恋人のようで、そうではない。だからといって友達ではない。そして全く冷え切っている訳でもない。そんな二人も自分の将来について考え始めるが、その考えを交わすことは無かった。二人は互いに干渉しないようにしながら、それぞれの道を探っていく。これがいつしか当たり前になっていた。 しかし、それぞれに転機が訪れる時、彼らの関係性は揺らぐこととなるー。
【詩集】 1 硝子の夜 2 レノアの神殿 3 白銀花の眸 4 Drive to The Dead World 5 アフリカの仮面 6 溺れる月 7 星月夜の菫 8 受難の人魚 9 少女衣装と肉 10 酔いどれ列車 11 舞踊る腰付 12 接吻 13 紅椿と白椿 14 くちびるの結び 15安息の夜 16 辷り寄る死に濡れたゆびさき