今はネットで本を買える時代だが、アツシはリアルな本屋が好きだった。ズラリと並んだ本の中から、予想もしない掘り出しものを見つけるのが楽しいのである。だが、楽しさに我を忘れると、後悔することになる。タイトルや装丁に惹かれ、中身をよく確かめもせず…
ここは郊外にある、政府の秘密研究所。その日、新聞やテレビで時々目にする政府高官が、いかにもお忍びという様子でやって来た。出迎えたのは、この研究所の責任者らしい老人である。「長官、お待ちしておりました。とりあえず応接室にご案内…
取引先と思いがけず話が弾んでしまい、塚本が勘定を済ませて外に出た時には、もうとっくに終電を過ぎていた。夫人が車で迎えに来るという相手と別れ、塚本はタクシーを探すため、ふらふらと道沿いに歩き始めた…
そこは、かなり歴史のある蝋人形館だった。派手さはないが、リアルな人形をそろえている。 その中に、中世ヨーロッパ風の服装をした西洋人の人形があった。ずいぶん昔からあったらしく、いつ頃からあるのか知る者は、もはや誰もいない。 最初に異変に…
田舎での法事の帰り、田岡が夕暮れの迫る山道を運転していると、今時珍しいことにヒッチハイカーに出会った。どうしようか迷ったが、特に急ぐ用事もないし、交通量も少ないので乗せることにした。 近づいてみると三十代ぐらいのやせた男で、顔が青白く…
あることが原因で、蔵に閉じ込められてしまった少女。 出たいと願い続け、神様に毎日一回お願いする。 だが、そんな思いは届かず、400年の時が経ってしまっていた。 そして、自分が不老不死だということにも気づく。 そんな少女のところに一匹の鬼と、高校生が現れる。 少女は一体どうなるのか―――― ※ホラー要素含んでいます。 ※更新遅いです。
旅行先で、写真撮影に行った「俺」と「A」。そこは心霊スポットとのことだったが、風景を撮りたいので行ってみることに。 真昼間、ふつう~に写真を撮っただけの二人だったが、夜に思わぬ出来事が……。 オカルト好きもそうでない人も、思わず鼻で笑うような話です。怖くないので、ぜひ。
京都府亀岡市の山中にある社、『三原稲荷神社』。通称、『廃神社』。 女子高生、橘 三咲は、とある縁からその廃神社に足繁く通う物好きの一人。神社の宮司代務者を名乗る青年、狭間とはそれなりに親しく、くだらないことから悩み事に至るまで気軽に打ち明けられる仲である。 ある日、いつものように学校帰りに訪れた廃神社で、他愛のないお喋りから、かつてこの神社で起こったと云われる伝説を狭間の口から聞く。それはある二人の男女の、忘れ去られた恋の話だった――。 時は遡り、世は宝永三年の花見月。 丹波国亀山の山中にある『三原稲荷神社』の巫女、葵は、育ての親にして神社の宮司を務めていた翁を喪い、途方に暮れる日々を送っていた。 そんな葵の前に、自らを『思想家』と称する一人の賽銭泥棒が現れて――? 不自由な巫女と、化外の力を持つ思想家が織り成す異聞奇譚!