或る戦の最中、己が足を負傷した一人の男が居た。 降頻る真白な雪の中、男が辿り着ひたのは一人の老婆が住む小屋であつた。 男は藁にも縋る思ひで其の小屋に逃げ込むだ。 冷へ切つた男に、老婆は温かな飯を用意する。 「雪女を、御存知でせうか。」 老婆は語り出す。切なく冷たひ、身も凍る様な昔語り。
「夜分遅くに申し訳ありませんが」 静かな室内に、闇とともに静かに侵入してくる影。 死にゆくものの最期を看取り、最後の願いを叶える死神。たった一人で部屋に籠る少年の最期の願い。最後の三日に寄り添う死神が見たのは、死を受け入れながら、むしろ死を望むような少年の孤独な姿。出会いの一日目、少年の日常の二日目、そして少年を取り巻く真実を知る最後の日。少年はなぜ死ななければならないのか。死にゆく少年に、死神が最後に吐いた嘘に込められた心情は。
町の自慢の桜並木。 そこにある一本の桜。その下で待ち続ける一人の女。 新しい生活を始める春に、俺は故郷の桜並木を思い出した。まだ母親に手を引かれて町を歩いていた幼い俺は、多くの木の中から一本の桜を目に留める。桜並木の不思議な木の下には不思議な女が立っていた。小学生、中学生、俺は成長するのに女はいつも微笑んでそこに立ったまま。高校生になった俺は、長年親しんだその桜並木を離れた。 俺が思い出すのを待っていたかのように、その再会は訪れる。 彼女は何を待っていたのか。
動物園の中にある小さな遊園地、そこには観覧車がある。それに乗ると迷いが解けたり、何かを思い出したりすることがある。昭和後期、私は土曜の仕事を終えて、今日三歳の誕生日を迎えた娘を連れて観覧車に乗った――。
他の男を想って作った手料理を夫に食べさせ続ける妻。小さな嘘をつき続ける夫。 種も仕掛けもない夫婦の、守りたい平穏な日常。
あなたには、譲れない「想い」はありますか…? その「想い」を貫き通す事はできますか…? 3年前…道を別れた少年と少女。 それぞれの「悲しみ」「決意」 そんな、それぞれの「想い」が交差していき… やがて、軌跡を生み出す。 「想い」をテーマにした…悲しくも、暖かい… クロスオーバーストーリー。
Linker三部作第一弾 神と人間との争いが終わり、人は神がいない時を流れ生き続けた。 ──千年後 マルスは行方不明になった父親の偶像に憧れ、兵学校へ進学し自分の故郷を守る為警備兵になることが当面の目標だった。無事王国立兵学校に入校し、2年後の春。アルスは久々に故郷の村に帰り、安穏な日々を送り日頃の疲れを癒やすつもりだったのだが・・・ 現在編成中 ************************************************************************ 前日談-salvage-編成中
怜の無事を確認し、要に事の次第を説明された真白と剣護は、安心に胸を撫で下ろし、要に感謝する。要がかつての智真の生まれ変わりだと聞かされた剣護は、縁の不思議を思う。 そこへ要の姉が帰って来て―――――――。
空の夕焼けは、濃い紅色と、黒色が混ざり合ったような、歪んだ色をしていた。限りなく、夜に近づいている。僕の向こう側から、一人の男性が歩いてきた。僕も男性に向かって歩いていく。そして、僕と男性が交差するかしないかの時。僕は、その男性の肩を、トントン、と二回、静かに叩いた。瞬間、男性は、人間を司る様々な構成要素を地球へと還元し、その場から永久に姿を消していた。僕は、何事も無かったかのように、まるで散歩でもしていたかのように、また元の普通の生活の中へと溶け込んで行った。