ここは郊外にある、政府の秘密研究所。その日、新聞やテレビで時々目にする政府高官が、いかにもお忍びという様子でやって来た。出迎えたのは、この研究所の責任者らしい老人である。「長官、お待ちしておりました。とりあえず応接室にご案内…
取引先と思いがけず話が弾んでしまい、塚本が勘定を済ませて外に出た時には、もうとっくに終電を過ぎていた。夫人が車で迎えに来るという相手と別れ、塚本はタクシーを探すため、ふらふらと道沿いに歩き始めた…
男は1人。 退屈な毎日をただただ目的もなく過ごす。 適当な快楽に身を任せ、いつまで経っても落ち着くことができない。 そんな男に差し伸べられたか弱い手。 男に一体、どんな未来が待っているのだろうか。
室井の娘が小学生の頃、ペットショップの前で泣いてせがまれ、ゼニガメを飼うことになった。五年の歳月が流れるうち、カメは想像をはるかに超えて大きくなった。小銭のように可愛らしかった面影はすでになく、ガツガツとエサを食べるとき以外は、一日中…
何十年ぶりかに日本に来た世界的な名画が、何者かによって盗まれてしまった。下手をすれば、国際問題になりかねない。本来であればすぐに警察に通報すべきだろうが、その名画を展示していた美術館の館長は悩んだ末、ある人物に連絡をとった…
宗教上の理由シリーズ、永らくお待たせしての一作にして、真耶達が中二の秋の頃の物語。今まで真耶たちの影に隠れていた登場人物にスポットが当たります。
君の目に、世界はどう映るのだろう。 高校最後の夏、朔一は入院した祖父の代わりに「成田荘」に管理人代行として下宿する。 しかし個性的な4人の下宿人たちは皆、人間の姿になりすました宇宙人だった! かくして常識なのか非常識なのか分からない彼らとの共同生活が始まってしまう。 朔一は無事、大学に合格できるのか!? 六畳半の一室から始まる笑いと涙のご近所SF。
「課長、ダメですよ」「ん、何がだ」「さっき経理の小池くんと話をしていたでしょう。あれはセクハラですよ」「えっ、わしは何もしとらんぞ。ボディにタッチもしてないし、下ネタも言ってない」「でも、小池くんのことを…
もう五月。五月と言えば、はい、そうですね。五月病です。立派な精神病だと思います。みんな僕みたく入院すればいいんだ! なんてね。 その前にメーデー。詩。 メーデーの意味、逸らしまくり。
小柳が住む街でも、カラス対策として生ゴミの夜間回収が実施されることとなった。生ゴミを出す時間が変わったといっても、その仕事はもちろん亭主たる小柳の役目である。その日もギュウギュウに詰め込んで一袋に収め、角の電柱の下に持って行った…
安田の会社では、年に一度、社員を何班かに分けて慰安旅行をしている。今年は田舎の温泉旅館に泊まることになった。貸し切りバスで観光スポットを巡り、旅館に戻ったら大浴場で汗を流し、浴衣に着替えて大広間で宴会をやるという、お約束のコースである…
ここは、とあるスポーツの世界大会を数日後に控えた街。その街の目抜き通りにある老舗のホテルでも、着々と選手団の受け入れ準備が進められていた。だが、何らかの手違いにより、よく似た名前の別々の国の選手団を二重に予約受注していたことが…
入社一年目の後藤が社員食堂で昼飯を食べていると、部長の岡部が同じテーブルに座った。「よう、どうだ。少しは慣れたか?」 部長といっても岡部はまだ三十代で、兄貴分的なしゃべり方をする。だからといって、後藤の方からくだけた返事をするわけにも…