*星空文庫

仁科 哲夫

仁科 哲夫

どちらかというと硬派の随筆・評論集です。

 宮崎県の気象区分は北部の平野部、山間部と南部の平野部、山間部の田の字に分かれます。私の住んでいる日南市南郷町は南部平野部に属します。温暖な気候と、海と山の幸に恵まれたところです。肉類が主で、魚介類が従の食生活が、こちらに来てから逆転しました。大阪より冬は暖かと思っていましたが、夏が涼しいのは予想外でした。テレビの天気予報で日向灘の場所に、東京、大阪、福岡などの気象情報が表示されます。住んでいる地区よりも、大阪の夏の最高気温のほうが高いのには驚きました。夏涼しく、冬暖かいので老人には大変に住みやすい所です。
 16世紀の南九州は日向の伊東家、薩摩の島津家、両家に挟まれた大隅の肝付家(きもつきけ)に分かれて覇を競っておりました。大国に挟まれた肝付は薩摩に飲み込まれるのを避けるために、伊東と誼を通じておりました。努力のかいもなく、ついに薩摩の属国となり、伊東攻略の先鋒を命じられました。伊東と戦っても利するものはなく、互いが損耗して漁夫の利を薩摩に与えるだけです。そこで空砲を用いて戦っているふりをする、偽戦を伊東家に持ち掛けました。伊東家もそれにのり、南郷町の津和野で偽戦が行われました。
 天正4年(1576)旧暦6月16日に行われたこの偽戦は、手違いで伊東勢が実弾を用い、肝付側は全滅しました。この伝承をもとに、4百ページの時代小説を書き上げました。主人公は肝付の武将、この偽戦で討ち死にした薬丸兼郷、雅号は湖雲です。
 いくつかの出版社に持ち込みましたが、「群を抜いた作品である」とか、「素人離れしている」とかおだてながら、自費出版を勧めてはくれますが、商業出版に踏み込むところはありません。要するに下手だということです。
  

有夫の婦

題名は法律用語です。既婚夫人の意味です。 路地の奥まったところに、こぎれいな格子戸、黒板塀からのぞく枝ぶりのよい 松、これは妾宅の典型的な表現です。 旦那が本妻そっちのけで、この妾宅にいくら入り浸ってもお咎めはない。 ところが、そのご本妻が、 「クヤシイッ」 と歯ぎしりして、アパートに若いツバメを囲い、旦那が身勝手にも恐れながら と訴えでると、ご本妻は刑法上の姦通罪(かんつうざい)に問われた。 ただしこれは、現在の憲法が施行され、この条文が刑法から削除されるまでの 話です。

  • 随筆・エッセイ
  • 短編
  • 時代・歴史
  • 全年齢対象
  • Copyrighted
  • 2012-08-02

ネイチャーコール

 あなたは女の立ションをご存じですか? わたしは何度も目撃しておりまます。 肘も触れ合わんばかりの、男の列に交じっての放尿です。 そんなバカなと思われる方は本文をどうぞ。                   ・

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
  • Copyrighted
  • 2012-08-03

わたしの宝物

 この年になると、死がそれほど遠くないところにきているという、 西行の気持ちはいたいほどよくわかる。生にたいする執着は強いが、 この願いはだれもかなえてはくれない。その時がきてしまえば、凛 として受け入れよう。  だが、もし選べるのであれば   「花のした 雫(しずく)に消える」 ような死をむかえたい。

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
  • Copyrighted
  • 2012-08-04

お母さん

 少年の屈折した言葉は文(あや)叔母さんにショックを与えた。 心なしか顔がすっと縮んだように見えた。 むごい仕打ちをしたという苦い思いだけが、心の襞(ひだ)に沈 にだ。

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
  • Copyrighted
  • 2012-08-05

日本再生案

 シンガーポールの街を歩いていると、よく米屋さんを見かけます。 店頭に焼酎の甕(かめ)のような容器に米を円錐形に盛り上げて、 ずらっと並べています。値段板が後ろに立ててあり、キロ当たりの 値段は20円から70円です。そのころ魚沼こしひかりは600円 でした。70円の米はインディカこしひかりです。  接待されるときは一流レストランですが、自前のときは屋台に毛 の生えたような食堂、あるいは屋台そのもので食べます。ただの一 度も、ご飯がまずいとおもったことはありません。  インディカこしひかりキロ70円がシンガポールの、そして世界 の値段です。魚沼こしひかりキロ600円が狂っています。

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
  • Copyrighted
  • 2012-08-10

血が騒ぐ

幾百千の世代を重ねながら黒潮にのり、東の海へと漕ぎ出していった祖先の血が、水平線 に昇る朝日を見ると、ひとりでに騒ぎだすのではないだろうか。 鼻べちゃずんぐりの私は、やっぱり夏が好きだ。

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
  • Copyrighted
  • 2012-08-16

僕の神様

 神は死んだ  ニーチエ

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
  • Copyrighted
  • 2012-08-17

移住

 三階の南の窓からは、外浦(とのうら)湾を一望し、日向灘に向 かうところに円錐形の岩礁ーこの地方では”えば”とよんでいるー があります。その形がフランスの世界文化遺産、モン・サン・ミッ シェルにそっくりです。さっそくこれを”プチ・モンサン”と名付 けました。

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
  • Copyrighted
  • 2012-08-26

この道はいつか来た

 昭和21年に預金封鎖が行われました。紙幣はすべて金融機関に預けなければなりません。 タンス預金をしているとすべて紙くずになります。その後、月に所帯主に300円、家族 一人に100円、500えんを限度に引き出しができました。まだインフレが進行してい る最中なので、給料生活者はたいへんな苦しみを味わいました。

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
  • Copyrighted
  • 2012-08-28

ところ変われば

 大阪でせこい運転をしていた私は、こちらのおおらかなマナーに洗脳されました。

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
  • Copyrighted
  • 2012-09-12