ナナエとミゲル

ミゲル

目の前で笑顔を見せながらくつろいでいる男、時々甘い缶コーヒーを口に運びながらたわいもない話をして笑っている。
名をミゲルという。ミゲルは良い奴だ。ナナエ程ではないけれど人あたりも良いし礼儀も正しい。
そんなミゲルを見ていると初めて逢った時の事を思い出した。

ミゲルにはナナエという双子の弟がいて、ナナエと僕とはもう5、6年の付き合いになる。ナナエに双子の兄がいると知ったのは、ほんの少し前だ。何かの弾みでミゲルと逢う事になって待ち合わせ場所の古い倉庫で待っている間にミゲルの顔を想像してみた。
双子というくらいだからきっとナナエに似ているんだろうと高を括っていた。
ナナエはおおらかで、優しい顔をしていて性格も温厚だ。

倉庫の向こうから歩いてくるナナエが見えた。ナナエと一緒に歩いてくる人があったけど、その者は全く関係のない人だろうと直感した。
ナナエが兄のミゲルだと言って紹介してくれた。ミゲルはナナエと全く似てなかった。二卵性の双子らしい。
ミゲルは衝撃的な存在だった。まるで爬虫類みたいな顔をしていて、歯が尖っていて牙みたいだったし、肌の色も浅黒く目つきは鋭かった。野性のそれだった。

そんな事を思い出した梅雨入り前の午後。

ミゲルは目の前で笑顔を見せながらくつろいでいる。時々、甘い缶コーヒーを口に運びながら。

終り

ナナエとミゲル

ナナエとミゲル

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-06-04

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