本懐

渡逢 遥

飢餓に(あえ)ぐ浮浪者達に、私の庭の()の林檎を(かす)められたとしても、私は彼等の行いを非難することはないだろう。ただ、その林檎を口にした者が大病を患ったり、急死したりしたところで私が責任を負うつもりはさらさらない。庭に種を()き、育てたのは確かに私だが、その樹は観賞用なのだ。その樹と、その樹の実を狙う(やから)を城の中から観賞するための。その実が成熟した背景を想像したり、私に(たず)ねたりしてこなかった者達に悪徳だと(とが)められる(いわ)れはない。私は自分の為にその樹を育てていただけだ。

本懐

本懐

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2020-05-23

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