時計とシンデレラ

二秒運針で時が進む世界で、シンデレラの身体は赤、青、紫、黄色、様々な色彩を放ちながら点滅していた。心のなかにしまっていたあらゆる感情も、心までもが点滅しているせいであらゆる感情が交互にあらわれる。まるで機械のようになってしまった心と身体で、足取りもおぼつかなく、心もいつも通り機能しない。このままこの状態がつづくのなら、いっそのこと死んでしまおうかとも思ったのだけれど、非力も同然の姿になってしまった今の身体ではどうすることもできなかった。そして心身の摩耗と疲弊を繰り返し、とうとうその場に倒れ込んでしまった。目の前に走馬灯のようなものが断続的に流れている。時計がこのまま進むか、完全に壊れて停止するか。そう呟くや否や、シンデレラは意識を失い目を閉じた。それから一年が過ぎ、時計が狂い始めたのと同じ日、長針と短針が同時に12の位置に止まったとき、シンデレラは長い眠りから目をさました。シンデレラはじぶんの心身に異常がないことを確認し、時計の目の前に立った。「あなたとわたしは繋がっていたようですね。」微笑みながらそう言うとシンデレラは時計をじぶんの血で拵えた水槽に沈めた。時計は正常に動き始めた。濁った血を頭から被るとシンデレラは静かに息を引き取った。これであと一年は、再び同じことが起こることはない。シンデレラの身体は赤黒い血液のなかで、煌々と輝いていた。

時計とシンデレラ

時計とシンデレラ

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-05-10

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