星のお姫様

タケノコ

一番好きな小説が星の王子さまです。
あんなに面白く、深いものはかけず、言いたいことを主人公たちに言わせているようなものになってしまいました。
楽しんでくださるとうれしいです。

一つ目

私の星には一本のアネモネが咲いていた。
「私には毒があるの。一見すると分からないでしょう。私ってとっても美しいから。だけれどあなたがもし、素手で私を折って毒が皮膚についてしまったらあなたはけがを負うでしょう。私の毒は取っても強いのよ。」
そう言ってその花はとっても誇らしげだった。

「だけれどもし、私が手袋をはめてあなたを折ってしまったら。」
というと、

花は少し戸惑ったようなひきつった声で
「そんなことは関係ないわ、だって私の毒は取っても強いんですもの。」
とそういった。

「大丈夫よ。ここではしゃべることのできる相手はあなたしかいないんだもの。折ったりはしないわ。それにあなたはとってもきれいなんですもの。追ってしまうのはもったいないわ。」

うまれてからずっと、その花は私の話し相手だった。

彼女はどこにも行った事が無いはずなのに外の世界の事をよく知っていた。
「外の世界では風っていうものが吹いていて、時には凍えてしまう事もあるのだけれど、その風に乗ってどこか遠くへいけるんじゃないかって思いながらゆられているのはとっても気持ちがいいのよ。それにね、ここみたいに真っ暗な天井がみえるんじゃなくて青とかオレンジ天井だったりするの。それにね、蝶っていうきれいな生き物もいて私みたいなきれいな花は友達になるのよ。」

私はというと他の世界の事は全く分からなかったし自分の幼いころの記憶すらもうほとんど残っていない。

「どうせあなたは外の世界の事を何にも知らないし、石塀の向こうに何があるのかなんて何も知らないお嬢さんなんでしょう。」花は勝ち誇ったようにそう言った。

だってこの空間をぐるっと囲んでいる石の塀は登ることはできないし壊す事なんか自分の力では絶対に不可能だ。
「だから知らない世界を知っているあなたと話すことが楽しいんでしょう。」

「あなたは自由に動く事ができるのにちっともうごいていないように思えるわ。私なんて地面に縛られてちっとも動けないって言うのに。それに私があなたの知らない事を全部話し終わったら動けない私はいらなくなってしまうのね。」
私だってこの星に縛られている。この塀の向こうにすら行くことができない。なんせ塀は自分の身長の三倍もあるのだ。どうやったって出られっこない。なんでそれを分かっていてこの花はそんな事を言うのだろうか。

「知ってる?」とその花はきいた。「私は、本来であれば私にエネルギーを与えてくれる存在が無いと生きていくことができないの。ある星ではすごく大きな赤々とした星からエネルギーが降り注ぐそうよ。でもここにはそんな存在は見当たらない。私はとっても特別な存在なんじゃないかしら。この特別な存在と話ができるあなたはとっても恵まれた存在なのよ。」

花はいつも上から目線で、あなたはどうせここから出られないんでしょう、あなたは一生私のお世話をしてくれるんでしょう、といった。

ある日の夜、私は何度試したか分からない塀のぼりを始めた。塀のぼりを何度も試した事もあって下の方には足がかりとなるくぼみができていた。だけれど、上の方にはまだ、ない。少しずつ少しずつ、くぼみを作っていく。その時、足がかりの石の表面で削れた砂が音を立てた。そのままつま先が石の表面を滑っていく。手に全体重が乗り、耐えられなくなって滑るようにして落ちてしまった。花の視線が痛い。見られている事はとっくの昔から知っているけれど、何も言わずに寝たふりを続けているのだから余計にいたたまれない。恥ずかしくなって夜に試すようになったっていうのにと思ってため息が出る。

やっぱり、あなたはここから出られないと、どこか花は少しうれしそうにさえ見える。悔しかったけれどだれにあたってもどうしようもないのだとそう思って必死にこらえた。

次の日、目を覚ますと塀に太い蔦が絡まっていて塀の向こうまで届いていた。それに気付いた私に花はどうせあなたは外に行けないと強がって言った。

私にだって不可能じゃない。そういって私はその蔦をのぼった。足がかりさえあれば簡単に登ることができる。花は何も言わなかった。

塀の上に立ってあたりを見渡すと、真っ暗な世界が広がっていた。いつか花が言って聞かせてくれたような広い野原も風にそよぐ草木も奇妙な動物たちもなく、ただ広い闇が続いているだけだった。

その蔦はね、私のものよ。
ほらあなたはどこへも行けない。私も行けない。花は安心したようにそう言った。

星のお姫様

まだまだお姫様はあきらめません。

星のお姫様

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