エゴの天秤。ミゲル外伝

こんなうわさがある。
近ごろ、火星の巷で、もともと、火星にはとある噂がある。忘却を誘う死神。戦争の犯罪人の前に現れ、今の幸せと、時に不幸な記憶でさえも、盗んでいくという死神がいる。そんな死神など、だれもうれしくはないだろう。その死神があらわれると10日あとに死ぬという噂もいらない。
 しかし、私のきいたこの噂も、その死神についてのうわさに尾がついたようなものだったのだろうか。

 或人が夜中眠っていると、とても、火星人にとってあこがれの、ある壮大な風景が、目の前にあらわれた。のんびりやの雲に、青ぞら。これだけで、小さなこどもだって、理解がおいつく。
 火星人にとって、地球の原風景というのはあこがれだ。大自然の中動植物がかけまわり、生き生きとした植物
が根を張り、昆虫も色んな種類がいる。一部の家畜と一部の動植物しか未だ、育てる事の出来ない火星にとって
はそれはあこがれの対象。

そんな中に、まるで宙からおとされたような感覚が走り、次に、その風景の真ん中、草原の中へ自分の体がポトンと落された感覚があり、それにしたがって目を開けると、夢の中に、自分の体が横たわっている。さっきみた、大自然と、それにかこわれた、牧草地のようなひらけた広原、まずたちあがろうとし、けれど腰がぬけて、風の音、虫の音、動物たちのおしゃべりに耳を傾けたはいいものの、別の声もきこえてくる。

それはノイズだ、砂嵐のような、次に草原にやってきたのは、そんなノイズで形どられた人がたの何かだ。彼等が、二人組の人型の影が、そこにたっている。何をいうでもなく、彼等に目を向けざる絵を得なくなる。だってそうだ。例えば美術館で、自分のすきな絵画をながめていて、そのすぐそばの枠ぶちか、透明なアクリルのカバーに、シミでもあったものなら、絵画鑑賞が台無しになる。休日の気分が台無しになる。それと一緒だ。その人もしばらく、自然をながめてたはいいのだが、その邪魔ものたちが、ずっと、草原にたちつくしているものだから、何ですか、とかたりかけてしまった。
“語り手”は、噂だから、体験者だけど、例えば、それが私だとして、けれどそれは得意な存在。亜人の系列ともされる、テレパシー能力をもつエウゲ、そう、この夢はエウゲしかみない。そしてエウゲは、その夢と引き換えに影の亜人?もしくは、影の人に、こう話しかけられる。

“あなたが失っていくのは未来?あなたが失っていくのは、舞台?”

 天秤の上には、皿がのっていて、皿の上には、法則性のない食材がならんでいる。けどまじまじとみていると、わかってくる。左には、嫌いな食材がならんでいる。嫌いといっても、食べることができないほどではないものだけど、どうやらその語りては、好き嫌いがあまりないほどだから。

 それにしたって、問われたことは、なんのことかはわからない。気になるのは、その夢が、絵画が台無しになることくらい。他のエウゲにだってきっとわからない、ただそのあと、草原の中からテーブルがせりあげてくる、丁度、影とエウゲの“語りて”を隔てるほどの平凡な大きさの天秤。そしてそこには天秤と火星の模型や、地図がのっていて、エウゲは同じことを問われるの。

“あなたが失っていくのは未来?あなたが失っていくのは、舞台?”

エウゲは、答えを出さなければいけないの。かつて、火星でおきた紛争で、一部の能力を、テレパシー能力を
エウゲは、戦争のために使ったから、そのための、代償としてその夢が現れるのだって町では噂される。けれど、未来も
舞台も、それが何を示すものかはわからない。この噂自体が不気味でしょう?だってエウゲは、すでに
未来を持つ能力も法律によって制限を受けていて、紛争の傷は癒えない。表舞台で生き生きとすることさえ、
だ平然とはできない。その夢は、いったい何を求めているのかしら?。

 語りては、読んでいた本をとじる。その片目には、青く光る白目に当たる部分と、黄色く光る虹彩があった。
にこりと笑うと、ぱらぱらと本のページがめくれる。そのぺージの一部にこんな書き込みがある。
“私はどうやら、人のユメを、時々、私のユメとしてみる事ができる能力があるようだ、けれどこれは、
私意外の亜人には、ない私固有の能力らしい”

 確かにエウゲは悪いことをした。そして人々がその夢や教訓に、ものをいうのは、そこまではいいかもしれない。けれどこれから気になるのは、エウゲ行いだわ。ただきっと、人間なら、だれしもが何か過去に罪を感じて、それをどう、生かし、殺すかを考えていることでしょう。でも、私は思うのそのすべてを、理解したら、きっとエウゲのすべては、報われるのかもしれないと。

エゴの天秤。ミゲル外伝

エゴの天秤。ミゲル外伝

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-04-06

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