宇宙人二世 マリア 最終章

ついに完結

第六最終章 エスパーマリア

 マリアはちょっとやり過ぎたかなと反省していた。
「私も挑発に乗りムキになったよううね。大人げない事をした」
 それから総務省では地質学者、宇宙研究学者、医学博士などを結集させてアルタイル星から贈られた鉱石を分析していた。見た目はなんの変哲のない石のようだが、ひとつは何故か熱を帯びて来た。やはり中で強いエネルギーが働いているようだ。もうひとつの石は簡単に割れた。その一部を電子顕微鏡で見ると細かい粒子がある事が分かった。これまでも粒子治療が行われて来た。この鉱石の粒子は微粒子同士の衝突で光を帯びている。まるで生命が蠢いているような。やはり地球上に存在しないエネルギーがある。確かに医学界に大きな進展を見せるかも知れない。それから各医学界の施設に五個に分けて送られた。
 だが横浜医科国立病院に送られるはずの鉱石が何者かに奪われた。医学界にとって貴重な鉱石だ。早速警察が捜査に乗り出した。分散した鉱石の大きさはマウス程度の小さな物をジュラルミンケースに入れて輸送中だった。人通りの少ない道路を走行中に前の黒いワンボックスカーが急停車すると後ろから同じく黒いワンボックスカーが停止し拳銃で脅され三人の乗組員は縛られジュラルミンケースを奪い逃走したという。これは計画的に行われ大きな組織が裏に存在すると見たが。犯人達は覆面を被り三人の被害者は目隠しされ、まったく犯人の手掛かりがつかめない。これは一大事だ。万が一国外にでも流れたら大変な事になる。総務大臣から依頼を受けた政務次官がマリアに連絡して来た。

「東野真理亜さんですか。誠に申し訳ありません。貴女が届けてくれた青っぽい鉱石の一部が横浜医科国立病院へ移送途中何者かに奪われてしまいしまた。我々も必死に捜査しておりますが未だに手掛かりが掴めません。貴女の力をお貸し願いませんか」
「え~奪われたとは穏やかじゃありませんね。しかし何故、そんな鉱石を輸送していると気づいたのでしょう。総務省に潜んでいるスパイとか」
「迂闊でした。そうかもしれません。確かに現金輸送車でもないのに、その鉱石が価値あると知っての犯行だと思います」
「取り敢えず電話では詳しい事が分からないので、そちらに伺います」
「助かります。何なら迎えの車を行かせましょうか。
「いいえ、バイクの方が早いですから何方か総務省正面で待って居てください。面倒な手続きを省きたいので」
 間もなくマリアはバイクで総務省玄関に到着した。すると足早に駆け寄って来て一人がバイクを預かり、もう一人が中に案内した。政務次官と数人の役人が待っていた。一通り状況を聞いたマリアは持ってきたコミポートを取り出した。今ではこのコミポートの使い方を覚え、色んなデーターを詰めこんである。その中には例の鉱石も入って居る。マリアか手かざすと、青白く淡い輪づくが浮き上がる。暫く操作しているとマリアが声を上げた。
「いた! たいへん横浜ふ頭よ。此処から外国に持ち出すつもりのようよ」
「なんだって、船名は分りますか」
「KEUM YANG Ⅶとなっています」
「それは韓国の貨物船ですよ。すぐ横浜の海上保安局に連絡させ出向停止させましょう」
 鉱石の行き先が分かりマリアと政務次官他三名が向かった。処が犯人たちは停船させられたと知り車で逃走した。パトカー五台で追跡したが、なんと彼らは韓国横浜領事館に逃げ込んだ。このまま領事館に乗り込めば国際問題になる。しかし犯人たち間違いなくこの中に逃げ込んだ。領事館の門の前で押し問答が繰り広げられた。
「貴方達は犯人を庇うのですか、相手は犯罪者ですよ」
「ですから知りません。どうしてもと言うなら本国に連絡して国際問題に持ち込みますよ」
 その押し問答を見ていた政務次官は苦り切った顔をしてマリアを見た。まるでマリアに助けを求めているようだった。この政務次官はマリアの能力を認めている。あの会議室で出来事、一部記憶は消し去られたが微かに眼が光ったのを覚えていた。あれは普通の人間ではない彼女ならやってくれる。政務次官の眼で哀願しているように映った。マリアは仕方ないと小さく頷いた。そしてその場から何処かに消えって行った。
 マリアは領事館の裏手に廻った。いま正面で押し問答しているから裏は手薄になっている。マリアは裏手にあるニメートルの塀を跳躍して軽く飛び越えた。もちろん裏にも防犯カメラは設置してあったが跳躍しながら防犯カメラに位置を瞬時に確信すると眼が光り光線を防犯カメラに浴びせた。防犯機能は停止したがブザーは鳴らなかった。なんなく領事館に忍び込み各部屋を見るというより人の気配で探す。職員は居るが領事館内には犯人らしい者が居なかった。マリアは人の呼吸の乱れまで読み取る事が出来る。マリアは変だなと思った。領事館本館とは別に離れの倉庫みたいな建物がある。その倉庫に向かって手をスライドさせた。手に感触が伝わって来た。まるで手にセンサーが付いているようだ。マリアはどんどん進化している。六人程潜んでいるのが分かる。こちらは呼吸が激しく波うっている。マリアは呟いた。
『さてどうやって捕まえようか。騒がれたら困る。出来れば一人一人ではなく一度に片付けたいものだ』
 マリアは倉庫の前に立った。ドアには内鍵が掛けられているようだ。外側だと鍵を外し事は出来るが内側の構造まで分からない。こうなれば炙り出ししかない。マリアは倉庫の外壁に向かって大きく深呼吸した。掌を壁に充て力を込めた。掌から何かが放たれているようだ。そのまま三分、四分と過ぎて行く。すると倉庫の内部が騒がしい。炎が出た訳ではないのに倉庫内の温度が急上昇してゆく四十度、五十度、六十度。犯人達は悲鳴を上げて自ら出て来た。その隙をマリアは逃さなかった。マリアは叫んだ。見つけたぞ! 一斉にマリアを見ると同時にマリアの眼が光った。六人の男達は眼を抑え転げまわった。あの暴走族の浴びせた光線と同じものだった。そう眼に唐辛子の粉末を塗り込まれたような強烈な痛みが走る。それは想像を絶する痛みだ。その男の一人がジュラルミンケースを持っていた。それを簡単に奪い取りケースの中を確認する。間違いない、あの鉱石だった。取り返せば用はない。本来なら警察に引き渡し所だが国際問題とかなんとか騒がれては困る。マリア塀を跳躍し裏手の通りに出て政務次官に電話した。
「終りましたよ。撤収しましょう」
「えっ早い。流石です。お礼は後程として撤収しましょう」
 領事館の前では未だ揉めあっていた。それが日本の役人達が急に引き上げたのでホッとしたというより驚いていた。まぁ引き上げてくれれば問題ないと思っていたら領事館の中庭の方が騒がしい。まさか裏から入ったのか。いやそれなら此処は我が領土。許されるはずもない。
 しかし裏庭のある倉庫の前で六人の男達がのたうち廻っている。誰にやられたと聞いても何がなんだか分からないと言う。倉庫の中の温度が急激に上がり火事かと思ったが、火事ではなかった。暑くて堪らず外に出たら何か光線のような物を浴びたというのだ。
「日本の特殊部隊が入って来るのも考えにくい。それこそ大問題だ。領事館に勝手に侵入すれば世界中から非難される。だとすれば少人数いや一人かもしれない。だとすれば日本にはエスパーでも居るのか?  日本には凄い奴が居るものだ」
 一瞬だが確か若い女が立って居た感じがするとこれも確かでない。それも一瞬で顔まで分からない。幸い全員暫くして眼が開けられるようになり怪我もなかったが盗った物を取り換えされてしまった。まさか日本政府に盗った物を返せと抗議も出来ない。ただ押し黙るしかなかった。

 総務省に戻った政務次官達は高笑いをしていた。奇跡的に取り換えし事が出来た。しかも盗んだ相手が韓国の手の者とはなんたる汚い国だ。抗議に来るなら来てみろ。お前達の犯罪が明るみに出るだけだ。抗議も出来まいと笑った。
 此処は政務次官室。その部屋の中には政務次官とマリアだけだった。
「本当にありがとうございました。マリアさん。やはり貴女は特殊の能力を持っているようだ。目の前でハッキリ見た訳ではありませんが、その力もアルタイル星人からの贈り物ですか。それとも元々そんな能力を持っていたとか。まるで半分宇宙人のようだ。いや悪い意味ではなく凄い能力だと思って。いずれにせよ。貴女のお蔭で貴重な鉱石を守れました。感謝の言葉だけでは済まされない。政府としても何かお礼を差し上げたいが」
「何も要りません。私はただの大学生であり日本人です。お国の役立ちのであればいつでも声を掛けて下さい」
 そう言ってマリアは総務省を出ようとロービーに出た。すると大勢の総務省職員が拍手で送ってくれた。悪い気はしないが照れる。マリアは再びバイクに跨り家に向かった。
「今日はちょっと張り切り過ぎたかな。お父さんとお母さんに、むやみに超能力を使うなと言われて居たのに怒られるかな。でもまぁいっか」
 気分良くバイクに跨って暫く走ると横から黒い車がバイクの行く手を塞いだ。マリアはドリフトして衝突を避けたが、また別の車がバイクにぶつけようと突っ込んで来る。マリアはハンドルを切って避けたがまた一台が襲って来た。完全に行く手を塞がれた。しかたなくバイクから降りると三台の車から十数人が出て来て取り囲んだ。
「なに? 私を知って襲ったの。残念ながら鉱石は持ってないわよ」
「そんな物はどうでもいい。お前を始末するだけだ」
「ふ~ん若い娘一人に十人以上も居ないと私に勝てないの。大の男が情けないわね」
「黙れ! やれ」
 それぞれが木刀やナイフを持っている。マリアの後ろから一人が木刀で襲ってきた。その木刀を振り落とし。だが其処にはマリアの姿はなかった。いやそれどころか姿が見えない。全員キョロキョロしている。
「はぁい私は此処よ」
 そんな声が聞こえた。だがどこにも見当たらない。声は上から聞こえる。驚いた事にマリアは十メートルほど上空に浮いている。全員があっけに取られている。だが一人が拳銃を取り出しマリアを狙った。たがそれより早くマリアは動いて、その拳銃を奪い取った。あとはもう瞬間移動にように一瞬して場所を変え襲った。気が付いたら全員が倒されていた。
「私は日に日に進化しているの。今では撃った拳銃の弾も掴み取る事が出来るのよ。貴方達のボスは分っている。殺されたくなかったら早く本国に逃げるのね。これ以上悪さしたら世界中何処に逃げようが生かして置かないわ。分かった? ボスにキチンと伝えるのよ」
「駄目だ。逃げろ! あれは化け者だ。我々では歯が立たない」
「失礼ね。若い女性に化け者じゃなくエスパーと呼んで。その方がかっこいいから」

後書き
 出だしはSF映画ETを思わせるよう出会いから始まりますが
こちらは子供ではなく大人の女性、宇宙人も人間の姿をした宇宙人
そんな二人が恋仲になり宇宙人二世が誕生、それが主人公マリアです。
皆さんどんな展開になったか想像とあっているかお楽しみ頂ければ幸いです。
最後までお読み頂き有難う御座います。。

宇宙人二世 マリア 最終章

宇宙人二世 マリア 最終章

  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-03-26

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