えいえんに夜のそこで

 絵のなかの海のように、おだやかに、凪いでいる、日々、というものは、まぼろしで、いやなことがあると、だれかのせいにして、それで、ゆるされるなんて、おもっていないけれど、でも、ときどき、どうしようもなくだれかを、うらみたいときも、ある。
 にんげんって、そういうものかしら。
 いつか、菜の花にうもれて、黄色い波にたゆたって、目をつむりたい。きみがそう言っていた春の日の、いきものたちの息吹を、はだで感じた瞬間の、すこしだけこわいのと、なんだかうれしいのと、わけもなくかなしいのとがいりまじったものが、わたしのからだの奥底で、静かに渦をまいている。きらいなひとを、きらいだと、切り捨てることは容易いけれど、きらいなひとを、好きなひとに変換するのは、むずかしくて、きらいなひとを、じゃあ、さけてとおれるかといえば、よのなか、そういうわけにもいかない場面が、あって、けれども、まいにち、だれかをきらうのも、うらむのも、つかれてしまうし、なんだかなって感じよね、と愚痴を吐いたわたしに、きみはほほえみ、うなずきながら、ホットミルクをいれてくれたね。泣いた。

えいえんに夜のそこで

えいえんに夜のそこで

夜は、わたしの夜は、なかなか明けない気がしているけれど、ほんとうは朝をむかえることを、おそれているのかもしれない。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-03-23

CC BY-NC-ND
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