夜の抜殻

利己的な夜が痛い

記憶の下腹部が内側から蹴りあげてくる

断続的な鈍痛に縋る宛もなく 臓の視界は次第に霞む

威嚇ができなくなった夜は みずからの指先だけをたよりに ゆっくり ゆっくり 去勢していく

画鋲も踏んだし 硝子も割った

そんなこともあった あったっけ

熱を奪われ息絶えた時間の断片たちが散らばった部屋で

卵巣と夜は死別した

罪人になり損ねた零時を数えて 永久の眠りにつく

哀しければ哀しいほど 月が綺麗にみえるのは みているものが月ではなく 月の向こう側だからだ

なにも孕めなくなった夜に 慈悲の接吻を降らせて 追悼を

わたしはついにじぶんのことも おもいだせなくなってしまった

夜の抜殻

夜の抜殻

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-03-04

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