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これが久々の星空になりました。

何個目かのドアノブを回すとその部屋のノブは回った。扉も開いた。鍵がかかっていなかった。
「おかしな場所に迷い込んだ」
その建物は迷路のように入り組んだ作りになっていた。曲がり角も多くて、
「ここはいったい。自分はどうしてこんなところに?」
こんなメンタルの現状では不安になった。角を曲がるのが恐ろしく感じた。向こう側に何かいるのではないかと、子供の頃階段を上った先の曲がり角が恐ろしく感じられたみたいに。

建物自体は瀟洒なつくりをしておりどこぞかしこぞに作り手のこだわりが感じられた。が、建物全体が光源に乏しくどことなく陰鬱な雰囲気を与える。不気味でもある。

そして外につながると思われる扉はどうしても開かない。

蹴ってもその辺の物をぶつけてもびくともしない。

そんな見覚えのない、縁遠い建物に一人。自分一人。
「まるで・・・」
ここに来た経緯もわからない。どうやって来たのか?自分で来たのか?それとも誰かに連れられてきたのか?拉致されてここに来たのか?何の記憶もない。

ただ、一人。

誰もいない瀟洒な洋館に一人。

「おーい!」
「だれかー!」
「ここから出してくださーい!」

そんなことはもうとっくにしている。でも、誰も出ない。声も聞こえない。物音もしない。衣擦れの音すら。ただ柱時計の耳障りなほど大きな時を刻む音が聞こえるのみ。

「・・・」
仕方なく、室内を散策し始めた。

落ち着く場所が欲しかった。ベットがあったらそこに横になりたかった。目を瞑って考え事がしたかった。今の自分の状況を思い煩いたかった。

「何も出ませんように・・・」
角を曲がる度、扉が開くかどうかドアノブを掴む度、それを願った。祈った。

しかし、いくら角を曲がっても、ドアを開けても、何も出ない。誰もいない。何もいない。

こんな瀟洒な建物だ。熱帯魚のいる水槽が一つあってもいいし、止まり木にとまっているフクロウとか鷹とかいてもいい。

でも、いない。

何もいない。

そもそも開く扉が少ない。大抵鍵がかかっている。力づくで開けようとしても玄関の扉の様にびくともしない。無理をしたら手足、体を痛めてしまうかもしれない。いざという時逃げられなくなるかもしれない。

「これはまるで・・・」

そうして散策を続け、いつしか自分が建物のどこにいるのかもわからなくなる位彷徨ったあと、

「あ、開いた」
その扉は開いた。

室内は真っ暗だったが、そこにはベットがあった。廊下から漏れる光源でそれは見えた。

でも、
「誰もいない」

誰も。

何も。

それでも一旦横になりたくて、とりあえず癖の様に壁に電気のスイッチが無いか手さぐりで探すとそれは案外たやすく見つかった。

押す。

ぱあーっと電気が付いた。

と、同時に、ぼとぼとと天井から何かが落ちてくる音がした。

「シャー」
それは蛇であった。

詳しくは知らないけど、ハブ。

スイッチを押したらハブが落ちてきた。

それでも、

「うわーい!」
見つけた瞬間うれしかったよ。

自分以外の誰か、誰かって言っていいのかわからないけど、でも、自分以外に生き物の存在がいたから。

「まるで・・・」
バイオ1みたいなこの瀟洒な建物の中で、自分以外の誰かがいたから。

だから、
「ペットにしよう!アニマルセラピーしよ!」
そう思ったよ。

先行き不安な自分がどうなるかもわからないこの世界で、
「かわいいい!」
心が弾んだ。

まあ、

でも、

そんなことはいいんだ。

ただ『バイオハザード RE:3』の発売まであと一か月っていうダイマが書きたかっただけなんだ。

それまで家に帰りたいなあ。

せっかく予約して購入しているんだからなあ。

帰れたらいいなあ。

それが言いたかっただけ。

でも、

今はとにかく、

「シャー」

このハブをどうやって無傷で捕まえるか考えてる。

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  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-03-01

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