過去の記憶

よく思い出すことがあって


人間誰でも思い出す限り最古の記憶があると思う。

前世の記憶を持っている人なら自分ではない記憶もあるだろうし、

認知症の人でも過去のことを思い出すことくらいあるだろう。

輪廻転生を信じておらず記憶力も低下していない私は

両方に当てはまらないけど思い出すことがある。

急な階段を一段一段下りて黄ばんだ壁に手をやった。

前を見れば祖母と母が台所に立っていた。

何の料理をしていたのだろう、

木のまな板で包丁を鳴らしガスコンロで青い炎が鍋を押し上げていた。

母を呼ぶと祖母が振り返った。

四角形の眼鏡をかけ太めのパーマの祖母が笑うと

いつも目がなくなるくらいのクシャクシャの笑顔になった。

愛おしさと耳の心地良さで痒くなるような声で呼ばれ、

私は私の10倍くらい大きい祖母を見上げるところで記憶は止まる。

ふと目を閉じて何も考えないでいる。

ぼんやりと階段を下り始める自分がスクリーンに映る。

また祖母は振り返る。

過去の記憶

過去の記憶

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 青春
  • 時代・歴史
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-02-05

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