指先の花は罪の枷

 えいえんに、おわりのないことなど、ないのだと、しろくまはいうし、せんせいは、かぎりあるからこそ、うつくしいのだと、かたる。
 指の先、左手の、中指の爪のあいだから、白い花が咲いて、じぶんのからだを養分に、植物が育っているという事実にすこしだけ、絶望する。花はみずみずしく、爪をおおいかくすほどの大きさで、咲いている。いつか、恐竜に食べられたいという祈りは、どうしたって叶わないで、きっと、神さまだって呆れ果てるような、そんな祈りだけれど、ぼくの祈りを、せんせいは、わるくないと評価するし、しろくまは、いいんじゃないかなと微笑む。ぼくの、左手の、中指に咲く花に、しろくまも、せんせいも、時折、キスをするので、どきどきして、その瞬間、心臓から神経、血肉、骨、脳が、みんな、しびれるよ。乱暴には、してくれないから、やさしさで、ふわっと包むように、ひどくたいせつにされる感じが、たまらなく怖い夜もあるんだ。隕石の衝突、氷河期、守ってくれるもののない時代を生きた、恐竜のことを、ぼくは、図鑑でしか知らないで、それでも祈る、捕食願望は、もういっそ、恋と呼んでほしい。
 ぼくの左側で眠る、しろくま。
 ぼくの右側で眠る、せんせい。
 ぼくらの世界は、神さまの庭。

指先の花は罪の枷

指先の花は罪の枷

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-02-03

CC BY-NC-ND
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