白息

水路を守る
コンクリートに踏み込んだ足が
久しぶりに 軽やかに 私を運んだ

以前まで 鉄の塊を背負って歩いていた
だが今ではそれは宙に浮かび 空を見上げると
西へ傾き掛けている光の炎へと変わっていた


君の手をひいて コンクリートの塀を登ると
見たことのない緑色の羊羹が固まっていた
それは身動きのとれない
かつての私を連想させた

川辺に咲く寂しげな草や枝が いつか何かを咲かせるのを待っている
冷たい風は懐かしさではなく いつか来る春を占うかのようである


いつの間にか 荒れた草の道へ辿り着いた
川をさまよう暖かそうな鳥たちが
本物の迷子のように見えてしまった
そんなはずはなく 彼らは今まさに
真っ直ぐ懸命に生きているのに


いつの間にか太陽は沈みかけ 寒さに愛おしさを感じながら 組みかけの巣を暖めた

新芽の期待に浸りながら
新しい扉を開いた

白息

白息

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-01-20

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