世界にあなたはひとりじゃないよ系のロックミュージック

 保存袋にいれてまで、たいせつにしたい恋でもなかった。腐ってゆくのなら、それもまた自然の摂理なのだろうと思うようにしている。動物園で、ある日とつぜん、白いワニがうまれたとき、でも、にぎわったのは地元の新聞だけで、全国的なニュースにならなかったのは、きっと、白いワニがうまれたことよりももっと重大な出来事があったのだと信じていたが、実際、その日は、白いワニがうまれたことよりも印象に残るようなことはなかったし、世界は、それなりに平和であった。どこかの国で、青い鳥が発見された、などということもなかった。せんせいが、授業中に、なぜか古典とまったく関係のない宇宙のこと、主に火星についてのあれこれを語っていたくらいで、彼氏がそろそろアルバイト先のハンバーガー屋さんで役職持ちになりそう、という友だちの話のほとんどは聞き流していた気がする。わたしは昼休みに音楽を聴きながら、あしたになったらそれなりに素敵な恋がめばえるような出逢いを期待し、薄く祈っていた。ピザ生地くらい、薄く。お昼に食べるパンはどうしてか、やきそばパンかメロンパンの二択になるなとも思いながら。

世界にあなたはひとりじゃないよ系のロックミュージック

世界にあなたはひとりじゃないよ系のロックミュージック

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-01-14

CC BY-NC-ND
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