自転車

新しいものを始めるときは


頭がおかしいと思うことがある

お世話になります、○○社の○○です、本日は~~…などの対応の仕方に始まり、光熱費や税金の支払い方、恋人への気持ちの伝え方

誰も教えないくせにさもそれをされて当たり前みたいな顔をしている、当たり前に享受している、何の疑いもなく享受している

そんな人間に限って自分ができないと不愉快な顔をする、理不尽で屁理屈をごねていることに気づいていない

色んなところにそんな人間はいる

スーパーの客、電車の乗客、車の運転手、恋人、ペット…

どいつもこいつもご享受ご享受ご享受ご享受ご享受ご享受ご享受ご享受ご享受

その癖自分からは何も与えられない求められても与え方がわからない

滑稽である惨めである不愉快である下品である馬鹿である糞である

自転車は初めから前に進んだのか?

左右の手足が別の動きをしなければいけない運動を初めからできた人間なんて居ない

補助輪なくして自己の技術を自転車に当てはめることのできた人間なんて居ない

両親の黄色くも青い声援なくして5m前方のゴールまで到達できた人間なんていない

出来て当たり前のことなんてない

出来ている人間は出来るフリが上手いだけで不安だらけだ

そして出来ている人間はただひたすら出来ているか確かめたいのだ

ペダルを踏めているのか前に進んでいるのか向かうべき方向は合っているのか確かめたいのだ

頭のイカれた環境で自分は正気だと確かめたいのだ

そしてその心細く拠り所のない気持ちに気づけたとき、痛みを感じる気がする

享受するのではなく肩に手を添えることができる気がする

優しくなれるような気がする

自転車

自転車

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-01-04

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