まるいボール

まるいボール、

受け入れなきゃ。

ぐっと口まで運んだら意を決して飲み込むか、飲み込まないか。

そんなところでずっと、迷っていたら、

誰かが横をすっと通り過ぎた。

フワッと冬の匂いがして、わたしは思わず振り返った。

きれいな髪を靡かせて、キラキラと光るカケラを振り撒きながら、

その後ろ姿にわたしはうっとり見惚れた。

はっと気づくと、まるいボールはどこかへ逃げてって、おいかけた先には、

あなたがそのボールを持って立っていた。

「はやく、飲み込まないと、わたしいなくなっちゃうよ?」

慌てて手に取ったまるいボールはすこし汗をかいていて、飲み込むには少し賞味期限が切れたと思った。

「ほら、はやく」

手が震えて、汗が滲む。

「わたし、消えちゃうよ」

あなたのその一言で、わたしは思いっきり勇気をだしてまるいボールを飲み込んだ。

消えかかってたあなたは、再び輪郭を取り戻した。

「良かった、ね。言ったでしょ」

ふふと嬉しそうに微笑むあなたを、わたしはだいすきだと思った。

「ところでさ、まるいボールって?」

「へ?」

少し馬鹿にしたように笑うあなたを、愛おしく思った。




















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何かを手に入れるには、それを受け入れなきゃいけない。

わたしが、わたしから。

たとえそれが苦しいことであっても。

まるいボール

まるいボール

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-12-22

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