殻
ひきさかれた、やくそく、とか、ちかい、とか、そういうだれかの、たいせつなものの欠片をあつめたとき、すこしだけ、やさしくなれた。
しろいくまのこと、好きだから、おどらされてもいい、と思っている。コーヒーを買ってきて、と頼まれれば、よろこんで買いにいくのに、しろいくまは、いっしょに買いにいこう、というひとなので、ぼくは、ますます、しろいくまのことが、好きになる。いつも見ている、川が、いつもよりきれいに見えた日は、たいせつなひとのたましいが、ひきさかれた日。
(ねえ)
こたえが、かえってこないよ。
いつまでも、夢のなかにしずんでいるから、手をのばして、すくいあげてほしい。
しろいくまが、どうしようもなく愛しいから、ぼくは、はやく、にんげん、という窮屈な檻から、かいほうされたい。花を摘むように、そっと、かぎをあけて。くるしいものは、どうか、そのままにしておいて。
町のほころびに、気づいてるの。
学校の音楽室から、赤黒い侵食がはじまっていて、ひとびとはみんな、目をそらして息をしている。
醜悪。
うつくしいもののたいはんは、うわべだけのせかい、だけれど、しろいくま、きみは、あいしてくれる?
冬になったら咲く花もある。
春を待たずとも。
殻