二十七時のドーナツやさん

 ノエルは、かみさまになれない。
 星の降る夜に、まちじゅうの信号機が、びかびかと点滅して、きみのからだはあしもとから、まぼろしになっていく。にんげんは、やさしいですね。そう言った、とあるくまの、漠然とした感じはいまでも、わすれらんないし、きれいなパステルパープルのつめを、こいびとのひふにくいこませていた、しらないおんなの顔も、ぼくの脳裏に焼きついて、はなれない。
 カフェオレをのむ、ドーナツやさんで、二十七時だけれど、ドーナツやさんはふつうにやっていて、おみせのひとは、げんきにドーナツを揚げている。チョコレートクリームをかけたり、生クリームをはさんだり、している。となりの席の、わには、シナモンロールをたべていて、ノエルは、シナモンロールがおいしそうといいながら、ソーセージパイをたべてる。
 いまごろ、高速道路は、おっこちてきた星々が、車のタイヤと、アスファルトのあいだで削られて奏でる、悲鳴にも似た音楽に、みちているでしょう。

二十七時のドーナツやさん

二十七時のドーナツやさん

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-11-16

CC BY-NC-ND
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