火星の生活

我々は、火星に移住した初めの人類の末裔です。あれから、私たちの祖先が暗黒の宇宙で生まれてから1000年という時が経過しました。私たちはそれから、先人の知恵とコンピューターと、超高度な情報通信技術を使い、なんとか地球の模倣をし続け、この惑星を開拓、発展させました。けれども私たちに明日はわかりません。
火星では、資本主義システムをさらに発展させた、人間個人の文化貢献度によって、採点された点数をもとに、あらゆる富が分配されます。
私は、音楽で功績を残し、その財産をもとに生活を立てています。たしかに火星では、こうした暮らしは、豊かな社会階層の一部として捕えられることでしょう。確かに、私は、なにも不自由がない世界にいます。
手を伸ばせば自動で家事が行われ、足をのばせばすべての食べ物が無償で支給されます。
ただひとつの心残り、不自由といえばこれです。宇宙の広さとほとんど同じくらいの孤独が、この狭い部屋。火星の実験室の中が提供されているということ。
火星は地球人の実験場です。ここに夢や希望はありません。だからこそ、この孤独を埋め合わせる呪いを、地球人は火星人におしつけました。
だから火星の人々は、モノをゼロから作ろうとするのです。そうすると、自然と、自然とは何かということ、その問いであり答えに行きつきます。自然に作られたもの、火星にはないもの、火星人は今それを探り始めたばかりです。

火星の生活

火星の生活

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-11-09

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted