金十境一±

 僕は無理に声を出したが、それが彼に聞こえたのかはわからなかった。

「―――そう、そうさ、そうだよ君がぼ、ぼかぁなんだよ。ぼかぁ君が大好きで、''あこがゑ''て、君みたいに''ないたゐ''、そう思ったよ。君に助けられてから、ぼくの全てが君!君!君になったのさぁ!愛され方や涙の流し方、嫌いな''まんま''やお仕事、利き手も左にするんだ、きっと、きっと治してみせるさ。そうだ、そうなんだよ、ぼかぁ、そうしているうちに、だんだん''れぷゐか''じゃあ我慢が、出来なくなってぇいたんだ。」

 僕は震えていた。目の前にいる僕は、確かに僕、僕なんだ。なのに、全く違う生き物に思えた。僕であるのにそれに触れることは出来ず、ひやりとした硬さしか感じられない。

「ぼくぁ、最近よく話せるようになったよ。ぼくぁ、君に追いつく日は近いと思うんだねぇ、、、意味でしかない、その程度なんだろうねぇ、ぼくたちゃあ。」

不吉に笑う僕を僕は水面に浮かべさせることしか出来なかった。

「またこんな鏡の前に…」

ああ、迎えが来た。彼は逆らうことが出来ず、惜しくもまたクレーンに持ち上げられる。あれはいったい、僕なのか、僕ではないのか、いつか、いつかわかるといいなあ。ぼくぁ、ぼくぁ、一体…。

「あぁ、っきゃ、うういえお、ぷぅ〜」
「はいはい、いい子ね。」

金十境一±

金十境一±

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-11-08

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