ごみ箱

ごみ箱

いつもの場所で……


やぁ!ぼくは元気だよ。

一応、何でも屋になるのかな?
あらゆる物を受け入れる心構えと、
拒否をしないのが自慢かな?
汚れ役?かもしれないけど、
それがまかり通ってイマが在る。
クリーンにする皆んなのために居る、
それがぼくのお仕事なのさ。
だから、いつもぼくは汚れているし
洗われた事なんて無いからね。
そりゃあ、洗おうともしないだろうね?
どうせまた汚れるんだから。
昔は、キレイだった物や
新品から大切に使われていた物も
やがて、汚れて壊れたらココに入る。
そんな物たちの安置所みたいな所だな。
その中でぼくは役に立っている、
それで良いんだ……それで。

たまに、能天気な家の人たちは
捨てるべきでは無いものを、
誤ってぼくに放り込んだりして
ガサゴソとぼくの中を掻き回す。
結局、見つからないで
右往左往バタバタとしている。
人間たちは、ほんと
脳みそってものがあるのか
疑問に思うんだ。

そんなぼくもやがて、
老いぼれたり引っ越す時には
捨てられる身なんだ。
それまでは、ちゃんとお仕事するよ!

ん?今度生まれ変わりたかったら、
何になりたいかって?!
そうだなぁー
同じ物を入れる立場でなら……
マトリョーシカかな?ははっ
ヤツらは面白い存在だからね!
自分たちを入れて満足するだけしか
取り柄がないからなー
それだけで持て囃されるし、
何も考えなくて良いだろう?
いずれは、
人間たちに飽きられれば
捨てられる身だけどさ。

今は、ぼくも流れに流されて……
リサイクルショップの
カウンター横の
据え置きのごみ箱になっている。
ココは快適だよー!
汚い物、生物なんて無いし
紙切れくらいしか無いから
いつも身軽さ。
ぼく自身はもう、
捨てられる事は無いからね!
あとは店長の気分次第で、
代わりが見つかるまではココへ居候さ。

でも、
ココは面白いところなんだ!
不要な人間たちと、
必要な人間たちが一緒に居る空間だ。
ぼくの仲間もたくさんここへ
連れられて来る。
箱もの、筒もの、小さいもの、大きいもの、
店員に気に入られて家に連れて行かれるものも居たっけな。
このカウンターのレジ隣に置かれたもの、
小さくて可愛いペン立ての子は
新人女子店員のお気に入りになっている。

チンッ……ガチャガチャー……ジー……
プスンッ……カチカチカチカチ……

あ!またレジが故障したかぁー
たまにあるんだよな。
せっかくレシートペーパーを新品に
入れ替えしても半分くらいは無駄になる。
そろそろ、昭和生まれのレジ爺さんも
スクラップで廃棄になるのかな?
爺さんには、このショップの色々な事を
教えてもらったのに、寂しくなるなぁ……。

ガラガラー……クシャクシャ……

また、
捨てられたレシートペーパーが
ぼくの中に入ったな。
お前たちは、そのまま可燃ゴミだからなー
短い命だったなぁ……南無南無。



この日店員の最後の仕事、
売り上げ計算でレジがトラブルとなった。
こうして田舎のリサイクルショップは、
シャッターを閉め、
店頭の照明が消されて今日一日を
終わろうとしていた……。

ごみ箱

ごみ箱

きれいにする事は良いことだ!

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-10-16

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