グッド・モーニング・ブレックファースト
雪がふる頃に、あいたいひとは、いつも、やわらかな、綿のなか。
真っ白い日。それは、朝、目が覚めて、カーテンを、しゃーっ、と開け放ったときに飛び込んでくる景色が、真っ白だった日。
真っ白は、一瞬で、おわる。
一瞬で、おわって、あとは、いつもの町並み。民家の屋根が連なり、遠くの方には工場の煙突と、山々と、鉄塔。
真っ白い日は、ものすごく、料理をしたい気分になるので、ぼくは、歯をみがいて、顔を洗って、着替えるのも忘れて、冷蔵庫からベーコンと、野菜室からほうれん草を取り出し、ひとくち大に切ったベーコンを、じゅっと炒め、ざくざくと切ったほうれん草を、くわえて、さっと炒め、塩と、こしょうを、ふる。
食パンに、マヨネーズで四角い土手をつくる。土手のなかに、生卵を割り入れて、それから、スライスチーズを短冊の形に裂いて、てきとうにのせる。生卵がこぼれないように、慎重に、トースターのなかにおさめて、焼く。仕上げは、ブラックペッパーをひとふり、ふたふり。
それらを、ふたりぶん、つくる。
ヨーグルトには、はちみつ。
ぼくは、ブルーベリージャムを、そえて。
コーヒーは、ブラックで。
ぼくは、あたためた牛乳に、紅茶の茶葉をいれて、ミルクティーに。
ものすごく、料理をしたい気分になったわりに、料理、と呼べるかわからない、手頃さのものを、ちゃっちゃっとつくりあげる、ぼくを、でも、せんせいは、ほめてくれる。
おいしいね。
あったかいね。
やさしい味がするね。
おみそ汁のための、とうふを、つい、つい、と、さいの目に切りながら、いままでせんせいに言われたことのある、うれしかった言葉たちを、あたまのなかに並べ連ねる。真っ白い日の、一瞬の、真っ白さがおわったあとに、みえる、朝日を浴びて、ゆっくりと起きだす町の、町を形成している、ずらりと揃えられた家たちのことも、ついでに思い出す。
(しあわせだね)
(しあわせ、かな?)
綿のなかのきみ、ぼくに問いかける。
世界はもう少しだけ、やさしくなりたいと訴えてる。
せんせいに言われて、いちばんうれしかった言葉は、たぶん、
グッド・モーニング・ブレックファースト