また、山が白くなる季節が来た。

まるで空へ向かって隆起したような山々の尾根の上には、灰色の雲が立ち込めて山を白く染めていく。

この辺りの木々は、枝先の小さな部分まで氷に包まれて、その向こうに光る太陽を散らして輝いている。

風が吹いた。


周りの全ての木の凍った枝先どうしが、ぶつかった。たくさんの薄いグラスを一度に打ち鳴らすようなキラキラした音が風の後を着いて行く。

何となく、振り返った。

私の後ろに、私が歩いて来た足跡が真っ白な雪に真っ直ぐ続いている。

その足跡は、私が生きていた、そして今生きているという証である。

その形、並び方は、私がこれまで生きて来たなかで培ってきた物だ。望んで来たのか、学んで来たのか、それは私を語っている。

車が通り過ぎた。

私の足跡は、タイヤに消された。

私は、前に向き直した。

そしてまた、歩き始めた。

雪がまた、空から落ち始めた。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-09-30

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