アイスクリーム

甘いアイスクリーム

あまーいアイスクリームを一つ

濃厚で溶けちゃいそうなアイスクリームを一つ

舐めなくても垂れて無くなっちゃうようなアイスクリームを一つ

手のひらに落ちた甘い粒をそのまま太陽に当てて、無くなるまでじっと待ったけど

案外無くならないってことが分かった

前を歩いてた少女が振り向いて私を見たけど、何事も無かったように向き直った

空から一粒雫が落ちてきてパラパラと沢山降ってきたけど

私はその場所でずーっと空を見上げてた

アイスがちょっとずつ押されて下に溶けてった

後ろから来た人が私を綺麗な弧を描くように避けてって

その後を続いて皆弧を描くように私の周りを過ぎてって

パラパラ雨はいつまでもパラパラ雨で

正面を向いたら女の子と目が合った

赤い帽子の女の子は誰かと手を繋ぎながら自分の指を咥えてこっちを見てた

誰かが女の子のことを引っ張って、女の子はこっちを見たまま歩みを進めた

「まりなちゃん」

後ろを振り返ると、昔仲の良かった少女が立ってた

ゆきちゃんは私の手を引っ張って「もう帰ろ」って言った

私はまだ赤い帽子の少女のことを見ていたかったけど、ゆきちゃんが手を引っ張るから後ろを振り向きながらゆきちゃんに合わせて歩いた

雨が止んだ時、手に持っていたアイスクリームはどこに行ったか分からなくて

手のひらに落ちたはずのアイスクリームも、溶けた訳でも無いのにもう無くって

「まりなちゃん、あんなところで何してたの?」

「アイスが、溶けるのが不思議で」

「まりなちゃん、最近おかしいんだって。お母さん心配してたよ」

「ゆきちゃん、どうしてアイスは溶けないのかな」

「まりなちゃん?アイスのことはどうでもいいんだよ」

「・・・」

「まりなちゃん、帰ろ」


ゆきちゃんに引っ張られてお家に帰ったけど、手に持ってたコーンはずっとずっと残ったままで、最後にそれを一口食べたけど、したのはちょっと居心地の悪い透明な味とふにゃふにゃの食感に少しのミルクの味

アイスクリーム

アイスクリーム

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-09-15

Copyrighted
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