銀河航路

やない ふじ

銀河航路に夢を見た。
惑星間の移動に決まったルートはないのだと、嬉々として言うあなたに夢を見た。
日帰りで金星旅行が出来る日を待ち侘びて、あなたは変わらぬままでわたしは粒子になって、シャトルの指定席ひとつ分のチケットを買った。日付は数字ではない、見るたびに変わる幾何学模様だった。

過日、
まばらな車体が時速80kmで走り駆けていくのを見ていた。
等間隔に浮かんでいた高速道路のライトは、まるで海底に漂う発光体のようだった。
数分間だけ、にぶい鉄のかたまりと一緒に潜水を楽しめる。蒸し暑さと草いきれとで窒息してしまわぬよう、窓をぴたりと閉め切った。なにもないからまっくらなんだね、とあなたが笑っていた。遠くの工場は摩天楼を騙っていた。

どこまでも行ける、と、錯覚を起こさせる長い道路にだって終わりはある。自由を求めて選んだはずの道路には一本一本、青色の名前がついていた。
口にしたその事実をけれど上書きするかのように、あなたは再び呟いた。
ここが海ならば宇宙のように、未知に包まれているはずだから、と。まっくらの中に本当の星が、のぞむのならば見えるのだ、と。


夕立へ晒したわたしの耳には、
あなたのことばが聞こえなくなった、


白昼、
汽笛に似た音、水素が鳴らすブザーに負けじと、あなた だった なにか は声を張った。

それがわたしの名だったら、と、まだ、夢を見ている。

銀河航路

銀河航路

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
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