謎の宿泊。

夏の休暇、とある有名な土地で、とある旅館に宿泊して英気を養っていた。旅館はにぎわっていたし、海沿いの土地なのでただシンとしている静かなだけの土地でもない、時折海岸へ散歩するのもよし、なんといっても、旅館は草木生い茂る大自然のど真ん中にあり、夜中には静けさだけがともにあった。家族連れの宿泊客も、思い思いに楽しんでいた。花火の音もよく聞こえてきたものだ。
しかし、ただひとつ妙な事にも遭遇した。あれはそう、私の宿泊したとても、大きなコンサートホールほどもありそうな旅館の二階。私の二つ隣の宿泊客の事だ。私は昼には散策をして、疲れたら、手持ちの本を読み、面倒な仕事はノートパソコンでそそくさと片付けたりしていた。夜になると窓辺から、月と星を見る。月の満ち欠けをあんなに観測するのは、子供時代以来だ。私の部屋は旅館の一番端にあり、正面からみると一番右奥になった。旅館は東をむいていたので、朝日は眩しく、だいたいその時間には人が起きだす。夜になると一回の露天風呂がにぎわう。そのサイクルの中で唯一の不思議が、例の二つ隣の部屋の住人だ。誰とも違うときに起きだし、誰とも違うときに入浴し、それならば別に変わったことはないのだが、彼からは人間らしい何かがかけている。それが何なのか、私には不明だった、見た目は普通の若い青年なのだが、それどころか、愛想もあり、身なりや服装も、身に着けているアクセサリ類も高級そうな腕時計をしていたし、きちんとしている。にもかかわらず、彼からはある生気を感じなかった。ひょっとすれば、それは私にも欠けているもののような気がしていたのだが、それが何なのか私にはわからない。けれど思い出そう思い出そうとしているうちには思い出せないもので、その旅館でのささやかな3泊4日の宿泊と滞在を終えて、日常に戻り、自分の職場件自宅に戻ると、私はそれに気が付いた。私は妻が家の中の事をほとんどしてくれていて、ときに妻に厄介者のような扱いをうけるが、その時に私は音を立てないように心がけている、そこで気が付いた。あの宿泊していた旅館の二つ隣の青年にかけていたもの、彼には音が欠けていた。彼が特殊な存在か、なにをしているかどうかなんてこのご時世わかるはずもなく、ただわかるのは、彼もまた、何かに厄介者として扱われている存在なのかもしれないという事だけだ。

謎の宿泊。

謎の宿泊。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-09-05

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted