心のAI

バイオリズムの波に対応して機械工学と機械学習によって人間の感情と心を先読みしていく装置が発明された。
だが実用的ではなかった。それは一切現実的ではない何の役にも立たない打などといった意味ではなく、単に役にたちすぎるからこそ、実用的ではなかった。
すぐさまそれは発売されたが、利用者のほとんどが、その機能に疑問を抱いた。たしかに感情や、心の変化を先読みするのに有用な機械だったが、だからそれが何に利用できるのか、といった感想がほとんどだ。利用者の例をとってみれば、会社勤めをするサラリーマンが一体感情の起伏の細部まで把握して、先読みしてしらされたことを、どう扱えばいいかわからない。うまく利用する人間は利用しうるだろうが、それにも高等の技術が必要な感じがする。
それもそうだ。その評価はもっともなのだ。なぜなら、それはただの装置ではなく、同時にAIだった。人工知能との対話の中で、話しの中で相手がする反応を先に相手につたえてしまう。これほどに厄介で、うっとおしい会話相手は必要だろうか?必要ないと考えられたのだ。我々の住む22世紀では。
それに、彼は、外観はただのプラスチック製の筒なのだが……。そういった“ポジティブスピーカー・ネガティブスピーカー”と言われる筒型の人工知能は未来ではポピュラーだが、最も流行らなかったもののひとつがこれだ。ホログラフで動物や人の形を模したものが筒状の中半透明の中で他のスピーカー同様、どうにも愛らしい動きをしたところで、まったく評価はかわらなかった。
ただ、それらにもとてもコアなファンがついていた。
被験者のこころさんは、只一人の成功例。
まだ学生だが彼女自身が利口で優秀、鋭敏性質もあって、人の心を先読みしてしまう彼女にとっては、そのAIは善き話し相手となった。
そうだ。人間が話し相手とならない英知と感情には、機械が話し相手となる時期がくるのかもしれない。なぜなら人間にさえ扱うのが難しい代物だからだ。

心のAI

心のAI

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-09-04

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