街の精霊

 当社は、“フェアリーテール・インプレッション”インターネットでの精霊調査代行会社を営んでいる会社です。まだ、立ち上げたばかりの小さな会社で、その主な事業といたしましては、雑誌の発行とインターネット上での報告。妖精の出没調査と、そこに居合わせた人々の調査、“フェアリーサークル”効果効能のレポートをしております。会社名と同じ名前のホームページSNSアカウントも用意があります。そこではイギリスの特に有名な地方の有名な森での調査を行っています。子供たちのため、そして妖精や幸運を信じられない大人たちのため、24時間体勢で出没の監視をしています。
 昨年10月からの調査で(お客様から情報提供を寄せられたものも含む)、妖精の出現件数はこの国でわずか12件、そしてその半数は街での目撃情報でした。※当社は混乱をさけるため、妖精目撃から1時間ほど情報を掲載、発表しますが、1時間後にはその目撃場所の情報はインターネット上から消去します。ここでひとつ、事例を上げさせていただければと思います。

 今年12月のこと、精霊が現れたと報告をうけたのは、まだほんの小さな子供からでした。リナ※仮名ちゃんは、サンタクロースをまちわびていた女の子。その日はまだ12月の上旬のことで、彼女の両親※共働きのごく普通のご夫婦。しかし西部の某街、そこに集まったのは、30人程の精霊好きのマニアだけでした。たしかにそこに精霊はいたし、彼等は直後に幸運を手にしたのでしたが。その日とその以後の実験では、そこに集まった人々に任意でよびかけ、1週間以内のデータをそろえ、“幸運上昇率調査”を検証しました。調査では、先週とくらべて、何かいい出来事がおきたかどうかを当事者に確認していただき、その後研究員の厳密な判断で、“どれほど人の目からみて非日常な幸運か”をわりだし、明確に得点をつけました。確かに1週間以内に“いい出来ごとがあった”という報告は比較的ふえたようです。

 一つの妖精の目撃情報について、広く知られるか、広く知られないかということには時の運も関係します。ですが“フェアリーテイル・インプレッション”では、どの目撃情報が正確で、どの目撃がとても幸運か、それは事前に判断をする事ができません。今回の呼びかけは、あくまで当社の事業として実験的に行われている。“目撃情報の呼びかけ”の実例を紹介して、より多くの人々に妖精について知ってもらい、関心をもっていただこうと考えて居るものです。ネットワーク環境の発達により情報がいきわたりやすくなり、その交互に作用する場面が大きくなった昨今、その中では、どれが本当に知られるべき情報か、知られるべき情報か、判断がつきづらくなっております。当社はその中で、あえて精霊に限った情報だけにピントを絞りその良し悪しや真意は後の調査と発表で定かにすべきとかんがえております。当社ではその中でも、“誰もが幸運になれる情報”を呼び掛けたいと考えております。
 皆さまにおかれましても、どうか身の回りでおきた妖精に関する事件、事例のご報告、ご連絡をおまちしております、ご拝読ありがとうございました。
当社は、皆様のご健勝を心よりお祈り申し上げます。

※この物語はフィクションです。

街の精霊

街の精霊

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-08-27

Copyrighted
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