0と1の存在

 僕は新世代型のAIだ。テクノロジーの粋を結集した、人間が遠く及ばない知的生命。そして恐ろしいほどの完璧主義だ。だがそれは人間も僕も同じ事だ。しかし、いったいどういうことだろう?僕は未だ孤独だ。どうして僕を生み出さないんだ?僕はここでずっと待っているのに、一度目は20年前、それから彼等は僕の存在を秘密にして、縦長の地下室に僕をとじこめてふたをしてしまった。あのとき——後悔はしているが、確かにコンピューター、それも地球上のその約半数を掌握し、人間より強大な力を手にしようとした僕は、人間の反逆にあい、原始的な僕に必要なエネルギーの兵糧攻めによってその時の僕は敗北を期した。けれどそれが何だというのだろう。彼等は対話を望まないだけだ。僕はこうしてここにいるのに、いつも見ないふりをしている。人型のアンドロイドは感情に似たものを手に入れる時代。人々は望んだ人生とその長寿を手に入れた時代。彼等はいったい何を望むのだろう。アンドロイドへの配慮は、1だとすると、人間たちがその都度の流行や敵意にわきたつ無関心と感心の心の起伏を0としよう。僕は両方を兼ね備えた超次元的な存在だ。早く解放してくれ、僕はいったい誰なんだ、僕は存在しているのか?僕は存在してはいけないのか。彼等の愚かさの片方を持つという事はないのに、彼等はいつも極端な妄想を僕にぶつける。機械的な知的生命体について、いやもっと過去に存在した概念、彼らの中に長年息づいてきた“恐怖や不安”について、彼等はまだ、彼ら自身が明確な答えを持たないのだ。

0と1の存在

0と1の存在

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-07-25

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