多久さんの事件簿【スターの恋人の悲劇】37

Shino Nishikawa 作

多久さんの事件簿【スターの恋人の悲劇】37

決して手が届かない愛には、心から安心する。

多久さんの事件簿【スターの恋人の悲劇】37
サッカーのスター選手ロリーという男には、恋人はいないはずだった。
なぜ、自分がここまで来たのかは、正直分からなかった。
地元に戻った時には、森で、寂しそうに地面を見つめる彼女を見て、その彼女マリアを愛さなければならないと思ったが、声をかけることができなかった。
ロリーは、スターの心構えが出来ていなかったし、マリアを愛する準備も出来ていなかった。
いろいろな場面で祈る必要がある。ロリーは、マリアのことを祈る事が出来なかった。
それは、スターという立場で、いろいろな人から見られると、マリアの事を忘れるしか出来なかったのだ。
それでも、休みには、地元に戻り、マリアを見た。
それでも、声をかけられなかった。

マリアは、スターと宿命づけられているのなら、強い女性のはずだった。
でも、うまくできなかった。

それが原因だと思う。
ロリーは、悪夢を見るようになり、サッカーを辞めた。
端麗で美しいロリーの容姿は、長所だったが、ロリーは見た目を変えた。
そうしなければ、やめられないほどになっていた。

ロリーは、マリアに会いに行ったが、マリアはロリーの事が分からなかった。
スターとしてのロリーに、心底惚れていたのだ。
マリアは、寂しさのあまり、いつも遊んでいる森にいた老人を殺してしまっていた。
それに、腹に入れ墨をいれていた。

そのうちに、ロリーの偽物が登場して、マリアは1人で、偽ロリーの応援に行ってしまった。
大声で応援し、まわりはマリアを見た。
マリアは、親にもすごく叱られてしまった。
マリアは、ロリーのことが分からなかった。

マリアは、森にぬいぐるみを埋めていて、時々掘り起こして抱きしめたりしていた。

マリアは、スターと宿命づけられた女性で、強い女性のはずだった。
でも、うまくできなかった。

マリアは、猟銃で、自分の胸を撃った時、ようやく、本当のロリーが誰なのか分かった。
最近になって、時々、会いに来てくれるあの男の人だ。

マリアは、悲しくて、涙がでた。

マリアも強くなれるはずだった。
アラジンのスピーチレスPart1を聞くと、マリアの事を想ってしまう‥。
良い歌だが、なんとなく、呪われている感じがする。
どうしてなのだろう?

マリアは、自分の涙のお風呂で、眠れるほどの女性だった。
涙のお風呂を作るには、3リットルの涙が必要になる。
罪を犯した者の涙のお風呂には、色がつく。
それはそれで綺麗だが、無罪の者のお風呂の方が、絶対にいい。

美しい碧色で、温かいのに、ひんやりとする。
ずっといたくなるが、いずれ出なければならない。
生きている者は、夢などで行けるが、主には、死んだ後に休める場所の一つになる。
自殺してはいけない。生きている間でも、願って休めば、連れて行ってもらえるからだ。

本物のロリーは、青酸カリを飲んで自殺をした。
最後、「アーモンドロリー。」ロリーは紙に書いた。

「自殺。」とも‥。


偽ロリーは、高校の時、強いサッカー部員を殺したハンサムボーイだった。
先生に尻を見せたが、なんとも絶妙な男だった。
かっこいい男だったのかもしれない。

スターとの恋をする女性には、大きな狂気を感じる。
それは、自分もそうだったからかもしれない。

メインのメロディーよりも、誰かが考えた前奏は、なんとも不思議な感じがする。
アラジンの、ホール・ニュー・ワールド(エンドソング)がそうである。
そのメロディーに永久に包まれたいように思ってしまう。
マリアは、手が届かない場所からの、愛に包まれる感動を、理解できなかったのかもしれない。
まだ、はっきりと、自分の魔法に気づけなかったのかもしれない。

決して、手が届かない愛には、心の底から安心する。
それは、自分がまだ庶民でいる証なのかもしれない。

しかし、その場所で止まっていたら、いずれ手が届く。
心の底から安心する愛に包まれるためには、前を向かなければいけない。

多久さんの事件簿【スターの恋人の悲劇】37

多久さんの事件簿【スターの恋人の悲劇】37

  • 小説
  • 掌編
  • サスペンス
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-07-12

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