名づけなくていいと思った

名づけなくていいと思った

   







海岸線の50分。走行。ときおりのあのひと。

34.5℃。泣いてばかりいたころ。ひとは遠く、ひとは近くに。経過したひと。偶発的にひと。おそらくはそれがひとを彩色する。

なだらかに、高気圧。ひとは頻繁にわたしを連れ出した。午後2時までの毎晩の経緯。

よく泣いた。助手席で泣いた。言葉ではなかった。走行するだけのための、沈黙。見なかった時計が切なくて。

陽射しは既になく、夜陰。コンビニの灯り。いつもの店員さん、やさしい男の子。いつものベルギーワッフル。夜陰を、ふるふるする(ふるふる?)。

兆候。ときおりのあのひと。

「ぜんぶ本気だ」

どこまでがなにものか、知ったことか。この悪態ですら記念日を設けたい。

徐行の工事現場。

よぎる。

名づけようがない。

名づけなくていいと思った。

回顧するのは、ひとと、わたししか、いなかったのだから。

マンションの鍵音、カランと、やさしい索漠。




  

名づけなくていいと思った

作者ツイッター https://twitter.com/2_vich

名づけなくていいと思った

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-07-02

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