その生活わけて、すこしでいいから

転娘生

日雲

何かと意識してしまうあたしはまたばかを見るんだろう、
そう、僕は大体ろくな目に合わない

小学校2年生の夏ドブにはまる女の子を見た
やっと7歳になった頃の学校からの帰り道、ドブに足をはめたことがある、男の子に見られた
このことは誰にもいえなかった

中学2年の梅雨時期、雨が降る窓の外を眺めていた
室温とそとの温度の差で窓が濡れていた
濡れた窓に滴る雫を通してみる窓とそと側の世界
滲んだ光りが綺麗にみえる

いつも窓の外を眺めている瞳が僕を映すことのないことは分かっている
色素の薄い透き通る瞳に映るせかいを僕はどうしてもみてみたい、ワンシーンでもいいから写り込みたい、毎日雨が降ればいいのに、なんて考えている僕はばかだ

窓のそとの水に濡れた世界に入り込みたい
むかし読んだ人魚の話
彼女は最後泡になって海に消えた
雨に濡れられてこの世界からなくなってしまわないだろうか、そんなこと無いことは分かっている

その瞳に水をたくさん溜め込んだ姿はきれいだろうな、光が射したらより薄くなるその瞳を観たい、無理なことだけど
こんなこと誰にもいえないよ

高校2年生マフラーを深く巻いて立つ駅のホーム
向かい側のホームにも人はまだらに立つ人
人の多すぎず少なすぎず中途半端な地元、すきだな
またみかける、華奢な肩幅に短くなったスカート
おなじいろのマフラー、偶然だろうか、
カイロであったまったポッケに手をいれる
向かい側のに立つ彼女

ポッケに手を入れ寒そうにマフラーに顔をうずめる
おなじいろのマフラーは友達との買い物で見つけた
いつも向かい側に立つ姿がそこにあった
ストーカーでは無い、誤解が生まれても仕方は無いとは思う、が、この時点で認めているようなものでは無いだろうか、いや違う
毎日の必需品だったカイロ
加えてこのマフラーを深く巻く
きょうもお揃い、冬の間だけの
このことは誰にもいわない


白い壁紙に薄いいろのカーテンは風邪と揺れる
あつすぎない日
そとから聴こえてくるのは自転車のこぐ音、車の走る音、人の歩く足の音、虫の音、猫の鳴き声、人の笑い声、
午前も午後も10時くらいがすきだ
何もしないで窓を開けるこの時間

社会人2年目、同棲という名の節約
こんなこと誰にもいえないよね
笑いながらまたふたりが話す

その生活わけて、すこしでいいから

その生活わけて、すこしでいいから

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
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