港のソコが硬いから僕らはとても街の中。




木製の白く円いテーブルの上で,
電話で急いだ給仕さんの気持ちが珈琲として揺れていた。
電話の主が代わりにお礼を言ってくれるのを願う。
頭上を飛んで行ったカモメがかき混ぜて行った頁。
丁度綺麗に述語から始まってる。
その前後を完璧にするために戻ること数枚。
どこにも続きが書いていない。
珈琲は慌てふためきを辞めている。
先程のカモメになったまま一口すする。
すっかり人に戻ってしまった。
カフェインに関係なく,
熱さは人を目覚めさせる。







肘付くテーブルのねじから始まって
街のあちこちはネジ馬鹿しやすそう。
風見鶏は強風でのみ高く鳴く。
ここにないクレーンの剥き出しの未来は
用事は無いと,ココには居ない。
ツナマヨがメニューで最先端を強調する。
昼夜を問わずピンクのシェイクは
ディスコダンスを踊ってる。
トラボルタにうたた寝できない。
実用性のある錨のように
レタスとハムのサンドイッチを注文する。
先に届いたナプキンは軽く飛んで,
海向こうまで逃げて行った。
鼻をかまれて捨てられない,
未来を願ってナプキンを再度注文する。







オールドスポートといってギャツビーは,
岬向こうの夢を見る。
ふらっと出掛けた祖父は返却期限を忘れていそいそと,
読了に老け込む。
港の硬さが気に入って砂浜の猫は物語らない。
塩の街。
オールドスポート。
猫は上手に顔を洗う。







若いものは辛うじて港町の猫より見つかりにくい。
古き良き瓶コカコーラ。
未来を進む前脚の,過去を追う後脚。
階段の影で泳ぐからハンドタオルまでも要らないんだよ母さん。
シャツを貫いてメモには一昨日食べたチリビーンズのシミもある。
素材は反芻してまだカッラカラ,
いつの間にやら午前を乗り過ごしたんだ。
猫のカルロは午後にはやって来たから辛うじて,
そう見つからないようにしたんだ。







まずはね,
布団を運ぼう母さん。
猫のカルロがソコ通れない。







祖父は帰って来ないから返却期限は平穏無事すぎた。
司書さんは受け取らないから結末は,
本屋に代わって売ってしまおう。







骨折の箇所から魚の,
しかも焼けた匂いがしたね。







塩の街。
オールドスポート。
カルロが何かを狙ってる。







生業の,
麦藁帽子で舟作ろう。
そのためだったら麦藁も植える。
育てながらも刈り込む。
髪の毛はそこら中に落ちている。
足りなければ使えば良い。
エコっていうが都会。
拾った雑誌は最新号。
だって大統領が変わってないよ。
国境線は力無く港町まで漂って,
帰って行く。
ドリームワールドの匂いは丁度ポップコーンだ。
黙りこくってる無声ムービーで
2時間を超えるために俳優皆で間を伸ばし伸ばす。
出来た舟から海が滲んできたってそこから泳いでしまえばいい。
自転車なきトライアスロン。
金属はどこか錆びるのが港町だって,
さっき表現 したでしょう。







人気のコンビニの袋だけ帰って来ては捨てられる。
お腹を空かせない気持ちは口元の煙草が欲しくなる。
ポール・マッカートニーみたいな名称の,
煙草があるならおくれよ?
オールドスポート。
塩の街。
若人は今日も見つけにくい。







電話中の給仕さん。
起床中の夢を見てるようなその話し方,
お婆さんと珈琲が冷める。







ほら玄関先。
猫がマークの配送車。
新鮮な魚類が届き始める。







豆はミールでゴリゴリされた。
ヤカンが雲を吹いてそこもカウンターも
胡散臭く演出されてる。
ほら新鮮な魚類がやっても来る。
舞台は整ってる
トレイを持って名演を頂戴。
引退した女優より上手な客に,
上手くなって見せるから。







妹は電話をくれて旅行カバンを送ったと言う。
ペアになれないカバンは今頃もう飛行機の中で
こちらに向って空を飛ぶ。
とんぼ帰りで送り返すという返事は確約を得なかった。
カラカラの旅行は一回で良いんだそうだ。
それは「セカイ」で決められている。
流行で最先端。
そう最先端なら港町によく合う。
納得した。
だから電話は切れる。







洗剤入りウォッシャーは塩と馬が合わない。
フロントガラスは塩味になって陽光で美味しく焼ける。
それはそれは青いホース。
先には錆びそうな銀の蛇口。
取り付けて水を差す。
少し頭が冷える。
メガネを拭こう。
そしてからカフェに行こう。
行ってから返してもいない,
数冊の
本を読もう。






オールドスポートといってギャツビーは
岬向こうの夢を見る。
ふらっと出掛けた祖父は返却期限を忘れていそいそと,
読了に老け込む。
港の硬さが気に入って砂浜の猫は物語らない。
塩の街。
オールドスポート。
カルロはとても上手に生きている。







母さんまずはその布団だ。
カルロがさっきから通れない。







骨身には塩が染みている。
それは猫の,
カルロにだって出来ない。







港の硬さが気に入ってんだ。
あとがきだってあっという間に,
もうすぐに終わる。







洗剤入りウォッシャーは塩と馬が合わない。







メガネを拭こう。
そしてからカフェに行こう。
行ってから返してもいない,
数冊の
本を読もう。

港のソコが硬いから僕らはとても街の中。

港のソコが硬いから僕らはとても街の中。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-10-19

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